ドキュメンタリー「チャレンジャー号:悲劇のフライト」を観る

日本の新型基幹ロケットH3。2023年2月17日に初の打ち上げを予定していたが、メインエンジン点火後の制御シーケンスに異常が発生し、補助ロケット点火フェーズに移行できずに打ち上げ中止となった。これは打ち上げの「中止」なのか「失敗」なのか。表現にこだわる人もいるようだが、個人的にまず思ったのは「正常に緊急停止できてよかった」だった。

イプシロンロケット6号機が打ち上げ後に制御不能となり、地上からのコマンドで空中爆破したのは2022年10月12日でまだ記憶に新しい。H3ロケットも同じようなことになったら国際社会から「日本はロケットをまともにに打ち上げられなくなったぞ!」と思われてしまうかもしれない。その可能性を考えると、今回うまく緊急停止できて本当によかったと思う。そしてこれは「失敗」ではなく「中止」あるいは「正常な緊急停止」だったと表現したい。そもそも「失敗」という言質を取ろうと躍起になっていた記者は一体どういうつもりなのか。PV稼ぎしか頭にないのか。「失敗」したその結果を結局だれが背負うことになるのか。そのへん考えているのだろうか(ただスキンヘッドをネタにするのはやめよう)。

さて、ロケット打ち上げの歴史上、有人飛行で打ち上げに失敗した悲劇的事故が過去にある。1986年のアメリカNASAのスペースシャトル・チャレンジャー号の打ち上げだ。この事故では打ち上げ後に補助ロケット破損による機体分解が発生し乗組員7名全員が死亡した。初の民間人宇宙飛行士(女性の高校教師)が搭乗していたこともあり、アメリカでは国家的悲劇としてその歴史と記憶に刻まれている。本事故の概要や詳細を知りたければ、ドキュメンタリー「チャレンジャー号:悲劇のフライト」を観ることをおすすめする。今回のH3の件もこのような歴史の上に成り立っており、宇宙開拓のミッションに挑み続ける人々に敬意を忘れないようにしたい。

Watch Challenger | Netflix Official Site
Engineers, officials and the crew members' families provide their perspective on the 1986 Space Shuttle Challenger disaster and its aftermath.

以下は「チャレンジャー号:悲劇のフライト」の各エピソードの簡単な感想。

エピソード1:宇宙を身近に

アポロ計画のような使い捨ての宇宙船ではコストが高く、いつまでたっても宇宙が身近にならないので、再利用可能なスペースシャトルを開発したが、おそろしく複雑な機体になってしまった。ただ打ち上げ実績は着実に積み上げられた。そんな中、補助ロケットに関する懸念が持ち上がるが…。なんでもそうだが成功が続くと、組織として少し傲慢なところが出てきてしまうのかも。

エピソード2:警告

Oリング(燃焼ガスの漏れを防止するためのゴム栓のようなもの)の破損が確認される。しかし、打ち上げ予定が詰まっており再設計する時間がない。さてどうする…。この状況はあるあるで、日本の3.11の原発事故を連想した。大事故が想定外であることは稀で、どこかで誰かがそのリスクや危険性に気づいているものである。

エピソード3:大事故

低温時のOリングの物性変化リスクは認識していたが、なぜか寒い日に打ち上げ強行。そして爆発。技術的判断より経営的判断を優先した結果の悲劇。防げたはずの事故であると思った。

エピソード4:歩みは止めない

要領を得ない説明を繰り返すNASA。結果、内部リークが発生し、Oリングの件をNASAが事前に認識していたことが明るみになる。そして再発防止に2年の歳月を費やし、打ち上げ再開に漕ぎ着ける。以後、有人飛行の死亡事故は発生していない…となればよかったのだが、2003年に地球に帰還するための大気圏再突入で機体分解が発生し、再び乗組員7人全員が死亡する痛ましい事故が発生してしまう。こちらの事故についても詳細を知りたいと思ったが、これは本編のスコープ外である。〆

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