心斎橋の大塚愛

昔、心斎橋に大塚愛がいた。

否、正確に言えば、大塚愛のコピーをしている女性が心斎橋にいた。商店街の地べたに置いたラジカセから大塚愛のカラオケを流し、それに合わせてマイクで歌を歌う。もちろんメイクや服装も大塚愛風である。ひと目見れば彼女の半端ではない「大塚愛」愛が伝わってくるのだが、初めてその光景を目撃した時、私は心の中に違和感を抱いた。

なぜ商店街で歌う必要があるのだろう?

カラオケボックスで歌えばよいではないか。それとも彼女はミュージシャン志望なのか?それならオリジナルの曲を歌うべきなのでは?いやいや、歌い手志望だから、カラオケで路上でアピールしているのだ。しかし、それなら…。

なぜ声やファッションを大塚愛に寄せる必要があるのか。大塚愛の需要は大塚愛本人が既に市場に供給しているのである。これではただの大塚愛の2番煎じにしかならないのではないか。それとも彼女はまだ世の中には大塚愛の供給が不足しているという市場分析の元、戦略的に自分が第2の大塚愛にならんとしているのか。

そんなことをぐるぐると考えてみたが、きっと戦略的大塚愛ではないのであろうという結論に至った。大塚愛が好き+ミュージシャンになりたいという想いが、彼女をこの行為に駆り立てているのだ。そして感じた違和感というのは、本当にミュージシャンを目指すのであれば、商店街で大塚愛を歌っている場合ではないのではないかという個人的な感想から来ていた。もう少し一般的な言い方をすれば、目的と手段が整合していないときの違和感ということだ。

無意識に誰かに寄せに行ってしまうということは往々にしてあることだが、彼女のように全力で大塚愛に寄せに行っていると、目的がよくわからず頭が少し混乱すると言ってもよいかもしれない。物まね芸人を目指しているようには見えなかったし。

心斎橋の大塚愛はその後どうなったのであろうか。今もいるのであろうか。知っている人がいれば是非教えていただきたい。〆

コメント

タイトルとURLをコピーしました