Tommy Emmanuelのインタビュー記事(2017年)

2017年頃にポーランドで撮られたTommy Emmanuel(トミー・エマニュエル)のインタビュー動画の和訳です

以下の作曲に対する考え方が印象的です

“To say a lot with a little, it takes great artistry(「少しで多くを語るには芸術性が必要」)”

以下のとおり内容を解説します

世界一のアコースティックギタープレイヤーになる方法は?

そんな方法は聞いたことがありません。自分に出来ることを毎日するだけです。賞を貰ったり、感謝されたりすることは良いことです。しかし、それだけでは家族を養うことはできません。家族を養うためには、仕事をする必要があります。これが現実です。精一杯働き、身を捧げる必要があります。世界を飛び回って、日々ライブをするのは楽しいです。それを喜んでくれる人が居ることも良いことです。しかし、それよりも大切なことは、良い仕事をするということです。

多くのギタープレイヤーがあなたのスタイルを真似ていますが…

それは自然なことだと思います。誰しも誰かの真似をするところから始まります。みんな同じです。誰かの演奏が好きになり、彼らのようになりたいと真似を始めます。私たちは音楽に感化されます。普通はアーティストではなく、音楽に感化されるのです。私は1959年にギターを弾き始めました。初めて感化を受けたのはThe Shadows(ザ・シャドウズ)のBruce Welch(ブルース・ウェルチ)でした。私はメロディを弾く兄のもとで、リズムギターを弾きたいと思いました。彼が私にとっての初めてのギターヒーローであり、模範となる人でした。その少し後に、Chet Atkins(チェット・アトキンス)をラジオで聴きました。素晴らしいサウンドとスタイルだと思いました。これこそ自分がやらねばなら、やりたいスタイルだと思い、彼の真似を始めました。そして結果的に、これは誰にでも起こることだと思いますが、自分の音を見つけました。私のスタイルは、ブルース、カントリー、ジャズ、ロック&ロール、ポップ、フォークが混ざり合っています。多くのスタイルを組み合わせています。また、私の独自のスタイルとして、作曲の仕方も挙げられると思います。人生を通して作曲について勉強してきましたし、シンガーやソングライターの曲を聴いてきました。ギタープレイヤーから学ぼうというよりも、シンガーやソングライターから学ぶうとしてきました。この作曲法が私のギタープレイには活かされています。

他者を真似るのは良い練習になる?

私は分析的な方ではなく、感覚や感情をより大切にします。例えば音がずれていたとしても、Jimi Hendrix(ジミ・ヘンドリックス)のレコードなんかは半分くらい音がずれていますが、そこに多くの感情や魅力が込められているのであれば、全く気にしません。Stevie Ray Vaughan(スティーヴィー・レイ・ヴォーン)がシミヘンの曲を演奏したときはよく調律が取れていました。ただそれはテクニカルな観点であって、それでも私たちはジミヘンの曲を好んで聴くのです。素晴らしいと思えれば、音がたまにずれていたって関係ありません。

音楽理論についてどう思う?

曲を知っていることは役に立つと思います。曲から学ぶことで自分のスタイルに活かすこともできます。大切なことはシンプルな曲から始めることです。そこから演奏の技術を学び、グルーブやテンポのキープ、心地よいメロディ、等々について理解を深めます。それらの要素が頭の中でうまく処理できるようになるためには、シンプルな曲から始めるのが良いです。ただこの段階では機械的に聴こえます。なぜならまだ音楽になっていないからです。それはただ新しい技術を学んだだけです。技術の練習が十分にできると、頭のスイッチが切り替わります。技術のことを考え、思い出すのではなく、音楽やメロディを聴くようになります。これが目指すべき状態です。例えば、The Beatles(ビートルズ)のLady Modonna(レディ・マドンナ)のような複雑な曲を弾きたいとします。私がこの曲をアレンジしたときは、まずこのパート(ピアノのリフ)を弾きたいと思いました(演奏)。次は歌のパートです(演奏&歌)。そしてこれらのパートを同時に弾くためには練習が必要でした。なので、こんな感じで練習しました(演奏)。すべてのパートが上手く弾けるようになるまで、1小節ずつ練習が必要でした。そして、メロディが歌に聴こえ、自分がどのようにメロディを歌わせたいかがわかるまで十分な練習をします。するとこんな演奏になります(演奏)。このとき、私の注意は音楽とメロディのフィーリングにあります。これは他の要素は既に練習してケアしているからできるのです。なので、技術の練習から始めてください。その技術が音楽になるまで。

日々の練習は大切?

私は毎日練習します。今朝も朝の7時から練習しました。ワルシャワの私のホテルの部屋でです。(基本的に)曲を演奏します。筋力と技術の練習がしたいときは、それようのエクササイズをします。こんな感じです(演奏)。こんな感じのエクササイズを繰り返し行います。これは腕や手の筋肉に効果があります。また、メトロノームを使った練習もします。この練習も有効です。曲によっては遅れたり走ったりする弾き方もしますが、大体の場合はメトロノームを使った練習が好きです。この練習で実際のテンポの理解を深めます。

どのようにして自分を感化し続ける?

感化される場所にいるということは非常に大切です。その場所に居なければ感化されることも難しいです。調子が良くない夜にさえ、これは疲れていたり、その日に感化される出来事がなかった場合等ですが、私は聴衆が望むショーをすることができます。これは曲があるからです。私は曲やそのアレンジに寄って立つことで、調子が良くない夜でも聴衆が望むショーができます。聴衆はこの魔法を期待して出かければ良いのです。おそらく期待通りの結果になるでしょう。外に出て、この部屋で次に何が起こるかは事前にわかるものではありません。幸いなことに、聴衆は毎回変わります。ホールも機材も毎回変わります。そのため自分の思った通りには行きません。私は1年に300回のショーをしますが、1度として同じショーはありません。これは信じられないことですが、真実なのです。やはり人なのだと思います。聴衆に向かって演奏する感覚が私を感化し続けます。毎日朝目覚めると「今晩はショーだ!」と初めに思います。次に思うのは「コーヒーはどこだ?」ですが(笑)。

作曲のプロセスについて教えてください

曲によって違います。いくつかの曲はあるアイデアから出発しました。例えば”Drive Time”という曲です。こんな感じであてどなく弾いていました(演奏)。これの繰り返しです。E、C#、F#、Bです。私はこれが気に入り、長い時間弾いていました。そして「このアイデアは良いな。これにストーリーを載せるにはどうしたらよいだろう」と思いました。そしてこうなりました(演奏)。こんな感じです。私はこの曲をこのアイデアから始めました。他の曲としては”Ruby’s Eyes”があります。これはJames Bond(ジェームズ・ボンド)の”Moonraker(ムーンレイカー)”という映画に使われていたコードに感化されました。このはじめのコードがとても美しかったのです(演奏)。これに声が重なります(歌)。そしてベース音が変わります。これを聴いたとき「何だこのコードは?」と思い、ギターを掴み、テレビのスイッチを切り、コードを見つけました。それでこの曲はできたのです。このような曲です(演奏)。これがイントロの部分ですが、James Bondのコードが使われています。この曲を書いたときは、ソロギターの曲をイメージしていたわけではありません。歌い手のため、バンドのための曲をイメージしていました。バンドと歌い手は私の頭の中にいます。これが人々が「この曲に歌詞はありますか?」と聞く理由だと思います。いつも人が歌いたくなるような曲を作ろうと心がけています。Chet Atkins(チェット・アトキンス)はいつも私に「歌ってみて」「ハミングしてみて」と云いました。「曲ができた!」と云えば、彼が初めに云うことは「歌ってみて」でした。歌えるということは常に意識する指針です。私は世界を動かす原理により興味があります。多くの人を感動させる曲を聴くようにしています。Elton John(エルトン・ジョン)、Billy Joel(ビリー・ジョエル)、Stevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー)、James Taylor(ジェームス・テイラー)、Carole King(キャロル・キング)、Justin Timberlake(ジャスティン・ティンバーレイク)などです。彼らの曲は素晴らしいです。私は彼らがどうやってそれを達成しているか知りたいと思います。例えば、 Eric Clapton(エリック・クラプトン)の”Tears in Heaven(ティアーズ・イン・ヘヴン)”はここ20年での傑作のひとつです。曲のブリッジはとても美しく、美しい転調があり、調を戻してソロに入ります。とても優れた作曲です。シンプルな曲ですが、このような曲は普通、作曲するのは非常に難しいです。少しで多くを語るには高い芸術性が必要となります。エリックはその才能があります。

ツアーで使用しているギターについて教えてください

3本のギターをツアーで使用しています。すべてオーストラリアで作られたMaton Guitars(メイトン・ギターズ)製で、ピックアップシステムを導入しています。サドル部分には6個のピエゾピックアップ、サウンドホール部分には小さなアーム付きのマイクロフォンを装着しています。アームは手で操作が可能です。音を拾いすぎていたり、鼻にかかるような感じになっていたりする際はマイクロフォンを操作します。より木のような温かみのあるサウンドに調整します。3本すべてのギターにこのシステムが導入されています。このギターはノーマルチューニングです。2本目のカットアウェイギターはドロップDやドロップGのチューニングで使用します。3本目のギターはややスリムなボディのもので、ミディアムストリングで1音下げチューニングで使用しています。これは特別なチューニングを使用していると錯覚させる効果があります。実際はただの1音下げチューニングです。私はいろいろなチューニングを使用するほうではありません。ノーマルチューニングの問題だけでたくさんです(笑)。ただ演奏技法によってオープンチューニングを使用していると錯覚させることはあります。例えば、こんな手の形ですね(演奏)。ノーマルチューニングでもこのような手の形を使用すれば、耳にはオープンチューニングに聴こえます。まぁ、詐欺みたいなものですが(笑)。

ペダルボードを使わないのはなぜ?

サウンド担当はWhitney(ホイットニー)ですが、彼がディレイやリバーブ等のすべてのエフェクトを担当しています。リバーブであれば美しいデスクに実装されています。高品質なデジタルデスクで、レキシコン製のリバーブなどが使えます。そのため、ステージ上では多くの機器を必要としません。アンプとプリアンプとチューナ、それだけです。シンプルです。私が追い求める良いサウンドは1種類だけです。すべては私の演奏の腕に掛かっています。もし違う音が欲しくなったら、演奏方法によって音を変えます。

あなたのギタリストとしての弱みは何?

チューニングにこだわりすぎるところですね。しっかりチューニングができていないと、気になって仕方ありません。頭痛だってします(笑)。

ステージ中に起きた最大の不幸は?

何度か電源が完全に飛んだことがあります。電気が使えなくなったのです。そのときは全部のブラグを抜いて、ステージから飛び降りて、アコースティックサウンドで聴衆の間を演奏してまわりました。電源だけでなく、照明も落ちたことがあります。そのときは、ロウソクに火を灯して、口に懐中電灯を加えて演奏しました。

今夜は何を演奏する?

新しいアルバム”Never Too Late”から何曲か演奏しようと思います。また即興演奏を多くすることでしょう。私はセットリストは作りません。ステージに出て演奏するだけです。今日最大の決断は、1曲目に何を弾くか決めるということです。始まってしまえば、後は進むだけです。ミディアムテンポの曲か、アップテンポの曲か、スローテンポの曲か、自分の気分を考える必要はあります。〆

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