粉飾決算とか原発事業の失敗とか凋落感の否めない東芝さん
そんな東芝が量子暗号技術の事業化に向けて頑張っているというニュースを見ました
実はまだまだ捨てたものじゃない?
というわけで2019年度の決算書[1]https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/pr/pdf/tpr2019q4_2.pdfをチェックです
本記事の総括を先に書いてしまうと、構造改革中の企業なので数字の解釈が難しいというものです
決して順風満帆な数字ではないですが、生き残りをかけて頑張っているのが数字から伝わってきます
連結業績
まずは19年度連結業績のサマリを見てみましょう
2019年度 | 前年度比 | |
売上 | 3.4兆円 | ▲0.3兆円 |
営業利益 (ROS) | 1,305億円 (3.8%) | +951億円 (+2.8%) |
コア営業利益 (ROS) | 1,616億円 (4.8%) | +811億円 (+2.6%) |
EBITDA | 2,101億円 | +962億円 |
営業利益は前年度比で+951億円です
ROSは”Rate of Sales”で以下のように計算します
- ROS(%)=経常利益÷売上高×100
ROSはざっくりですが、日本の企業なら4%くらいなら平均値、10%なら優秀らしい[2]https://okugoe.com/profit-margin/ので、ROS=3.8%で前年度比+2.8%なので、着実に立て直しが進んでいるといった印象です
なお、コア営業利益の方は、「営業利益から構造改革費用や新型コロナウイルス影響を除いたもの」です
なので、実力的にはROS=4.8%くらいですよ!というのが東芝の主張のようです
EBITDAは税引き前の利益で、+2,101億円の黒字です
キャッシュフローの状況
続いて19年度のキャッシュフローの状況を見てみましょう
2019年度 | 前年度比 | |
営業キャッシュフロー | ▲1,421億円 | ▲2,670億円 |
投資キャッシュフロー | ▲1,226億円 | ▲14,280億円 |
フリーキャッシュフロー | ▲2,647億円 | ▲16,950億円 |
数字だけ見るとなかなか衝撃的です
営業キャッシュフロー
まず営業キャッシュフローが赤字ですが、2,019億円分は以下の一過性の要因と説明されています
- LNG事業譲渡損失
- 下請け取引条件改善影響等
つまり、一過性の要因を取り除けば、営業キャッシュフローの実力は-1,421+2,019=+598億円の黒字と主張したいようです
大規模な構造改革中の企業なので、そういうこともあるかな、と思いますが、数字の評価が難しいところです
投資キャッシュフロー
投資キャッシュフローは-1,226億円です
この数字だけ見ると、営業キャッシュフローの実力値以上に投資してるなー、攻めているなー、という感想ですが問題は前年度比です
前年度比は-14,280億円です
前年度の+13,054億円とえらい差だな、となるわけですが、これは18年度に何かしらの大型資産を売却したということだと思うので、これも一過性と云えば、一過性だと思います(1兆円以上の資産を売ったので企業体力がしぼんだのは確かだと思いますが)
財務キャッシュフロー
決算説明書には記載されていませんが、決算短信には財務キャッシュフローが記載されているので触れておきたいと思います
財務キャッシュフローは-6.872億円の赤字です
借金返済してるんだなー、という感想くらいです
おわりに
今回はインフラサービスカンパニーへの生まれ変わりを図っている東芝の決算書を確認しました
決算説明書を見ていると、大企業の構造改革というダイナミクスと難しさが感じられます
イメージとしては、東芝という大型船を、乗組員の死者が出ないように、新しい小型船に載せ替えていく作業なのかなと思いました
もちろん、大型船時代の施設や乗組員は、小型船には全員載せることができないので、ある程度の施設や乗組員は船の外に逃がす(事業売却やリストラする)必要があります
そして、このような状況下の企業の決算書の数字を見て、改革が順調に進んでいるのかを判断するのは難しいなと感じました〆
References
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