東田直樹「自閉症の僕が跳びはねる理由」を読む

重度自閉症の東田直樹氏による著書「自閉症の僕が跳びはねる理由」を読んだ。著者は通常のコミュニケーションはほぼ不可能なようなのだが、それでもこれだけの文章がかけるのだと驚いた。それと同時に、これだけの知性を発話という手段で表現できないのは相当に辛いだろうにと想像して心苦しくも思った。

昔、NHKの番組で東田氏の特集を観たことを思い出した。テレビの中の東田氏は、本書のタイトルのとおり飛んだり跳ねたり、同じセリフを繰り返したりと、一目見て自閉症のそれであるという行動パターンを示していた。しかし、そんな彼が紙に書かれた文字盤を用いて、ゆっくりではあるが文章を紡いでいく姿は、自閉症という症状について自分の認識を改めざるを得ない光景であった。

東田氏いわく、自分が周りに迷惑を掛けているのはわかっている、という。

東田氏いわく、記憶にはっきりした順番がないのだ(つまり、昨日起きたことも、10年前に起きたことも、あまり大差がない)、という。

この2点を伝えてもらえるだけでも、自閉症の人たちがどのような感覚で日常を過ごしているのか、想像するヒントになる。本書で東田氏は自閉症のことを「原始の感覚を強く残した人間である」と表現している。生命は母なる海から生まれた。だから僕は水が好きだ。原始生物は高度な大脳は持っていない。だから僕は反射行動に支配されている。そういうことなのだろうか。〆

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