松本健太郎「人は悪魔に熱狂する」を読む

人間が直感や感情によってどのような判断を下すのか。さまざまなシーンを例に、バイアスまみれの意思決定を読者に自覚させるのが松本健太郎氏の著書「人は悪魔に熱狂する-悪と欲望の行動経済学-」である。

世の中で一番たちの悪いバイアスは「自分は客観的に物事を捉えている」と考えることだ。自分は冷静で論理的であり、自分と同じくらい客観的な人ならば、自分と同じように物事を捉えるはずだという思い込み(ナイーブ・リアリズム)。そんな驕り(おごり)とも言える態度を自分は取っていないか。改めて自戒したい。

自戒したいことがもうひとつ。能力が低い人ほど自分を過大評価するというダニング・クルーガー効果。逆に能力が高い人は自分を過小評価するらしい。自分を奮い立たせようと、鏡の前で「あなたは最強よ!」と叫んでみたり、肩で風きって歩いてみたりするのは一概には悪いとは言えないが、その「自分に対する鼓舞」がいつしか「自惚れ」に変質していないか。ダニング・クルーガーしていないか。気をつけたい。

一方で、誰しも同じ分野で働き続けていると、ある種の全能感のようなものが出てきて、ダニング・クルーガーしてしまう気もする。実績に基づく適切な自己評価とのバランスは難しい。そもそも客観的な自己評価自体が、ほぼ不可能に近い。だからこそ、謙虚に、誠実に、周囲への感謝を忘れない生活態度が大事なのだろう。〆

コメント

タイトルとURLをコピーしました