安宅和人「イシューからはじめよ」を読む

2010年代に「イシューが〜」とか「バリューが〜」とかやたら流行っていましたが、たぶん本書のヒットが原因

「何がイシューだよ、かっこつけて『問題』を英語にしただけじゃないか」

と思っていたけいやは本書を読まずにスルーしていました

しかし、ブームが過ぎ去るとそろそろ読んでみようかという気にもなり、読んでみるととても良い本だったので、数年前のひねくれた自分の愚かしさにがっかりです

やっぱりイシューですよ、みなさん

というわけで、安宅和人氏の著書「イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」」を読みました

知的生産の効率を上げるための基本的な態度について記した本書

本質的な内容なだけに読んですぐに「生産性爆上がり」ということはないですが(というかそんなものはそもそもどこにもない)、表層的なテクニック本とは一線を画した読み応えのある内容になっています

本書の感想

実践あるのみ

本書は生産性(投入時間に対するアウトプットの量)を向上させるための基本的な考え方について記しています

「このツールを使えば簡単♪」みたいなことは書いていないので、ある意味とっつきにくいです

正直けいやも1回読んだだけではちょっと消化不良を感じたので、読了後すぐにもう1回読み直しました

結果、「読んで理解できるのはここまで、あとは実践あるのみ」という結論に行き着きました

本書の使い方としては、うまく結果が出ないときに知的生産の基本動作から逸脱していないかのチェックに使う、というのが良いかと思いました

と、まぁ、内容の説明もなしに書いても何のことやらなのですが、本質的な内容なだけに、本書の要約を書き記したり、要約動画を観たりするのは全く役に立たないと思いました

強いて書くなら、解くべきイシューをよく検討した上で、構造的に取り組まないと生産性は上がらない、ということでしょうか

宮崎駿や村上春樹は生産性が低いのか

読んでいて少し気になったことをひとつ

本書ではストーリーラインの重要性について記した箇所があります

要は、検証して結果が出てからストーリーラインを考えるのではなく、まずは検証前の仮説の積み上げでストーリーラインを考えておいて、その仮説をひとつひとつ検証しながら同時にストーリーラインも書き換えていくというものです

確かに生産性という観点からはこの手法は正しそうです

本書では知的生産のストーリーライン作りは脚本と同じようなものということで、ディズニーやピクサーの脚本家の例も引き合いに出しています

ここで思ったのは、宮崎駿や村上春樹はたぶんこの手法は取っていないということ

確か両名ともストーリーがどこに向かうのかわからないまま書き始め、何度も書き直しながら、なんとか物語を着地させるという手法を取っていたかと思います

そしてこの手法でもって、多くの人を突き動かす作品を残している

さて、ここで言いたいのは、生産性とは質の高さを追い求めているわけではないということです

生産性はあくまで投入時間に対するアウトプットの量です

よく60%の出来のアウトプットを80%にしようとすると、60%の出力にかかった労力の倍は必要とか言いますが、宮崎駿や村上春樹の手法は正にこれで、アウトプットの質を80%以上に引き上げようとするアプローチなのではないかと思いました

質を追い求めることができる立場の人は、どちらかと言うと特殊な立場の人で、一般の人々は「そこそこの出来をなるべく早く」が求められることがほとんどだと思うので、宮崎駿や村上春樹の手法を真似しないほうが賢明かと思いました〆

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