「財務省って何してるの?」
そんなことを普段の生活では考えることはあまりありませんが、「日本は借金大国でこのままだと破綻する」という物騒な話も聞こえてくるので、たまには気にかけてみましょう
ということで、倉山満氏の著書「検証財務省の近現代史」を読みました
日本の近現代史をとにかく財務省(大蔵省)目線で語りつくす本です
歴史の記述は詳細まで及んでおり、かなり読み応えがあります
財務省の歴史を知りたい方には打ってつけの本だと思います
本書の感想
本書の主張
基本的には財務省の歴史を解説する本書ですが、まずは著者の主張を理解しておいた方が読みやすいと思います
なぜなら、著者の主張を下支えするように歴史が語られていくからです
著者の主張をまとめると以下です
- 恒久的な増税反対
- 経済の適正な状態はマイルドインフレ
- 金融政策で市場に流すお金の量を増やせ
恒久的な増税反対
著者の歴史観からすると「増税は大蔵省50年の伝統に反する行為」だそうです
要するに、今までどんなに辛い時でも増税だけはしてこなかったということです
確かに歴史の勉強をしていると増税で国が亡ぶ例は枚挙にいとまがない感じはあります
経済の適正な状態はマイルドインフレ
マイルドインフレとは「穏やかなインフレ」ということ
つまり、生産物よりもお金の量が少し多い状態です
この状態だと、生産物の価値が下がらないので適正な経済状態が保てるとのことです
要するに需要が供給を上回っている状態なので、仕事に価値がある状態と考えるとわかりやすいかもしれません
金融政策で市場に流すお金の量を増やせ
本書では「1997年の日銀法改正は失敗であった」という立場をとっています
その理由は、この改正により日銀の独立性が強くなり、政治主導で市場に流れるお金の量をコントロールできなくなったから、だそうです
要は「市場にお金を流したいのに日銀が云うことを聞いてくれない!」という状態は良くないと指摘しています
財務省の歴史
本書の主張がわかったところで、本題の歴史ですが「そもそも財務省って何をするところ?」から始めたいと思います
財務省って何をするところ?
財務省とは、国の歳入と歳出を管理する官庁、すなわち税金を集めて予算として配分する役所です
財務省の中でも徴税権を行使することろを主税局、予算編成権を行使するところを主計局と云いますが、中でも主計局の権力は絶大のようです
そのため、昔から現代にいたるまで財務省はエリート官僚の巣窟で、以下のコースがトップエリートの証となっています
- 東大法学部➡財務省➡官房長➡主計局長➡事務次官➡天下り(日銀総裁、東証理事長、等)
例えば、2021年現在の黒田総裁の経歴を確認してみると
- 東大法学部➡財務省➡主税局➡大阪国税局長➡日銀総裁
となっていました
黒田総裁って主計局畑ではなく主税局畑なんですね
最近はエリートコースも多様化してきているようです
財務省の歴史を追う
財務省の歴史については、とてもまとめきれないので詳細は本書を参照してほしいですが、ひとつポイントを挙げるとすれば、「財務省の権力は絶大だが、いつでもその権力を自由に行使できているわけではなかった」ということでしょうか
政治の仕組みやら要人のしがらみやらで、権力のある所はいつでも泥まみれです
はたから見ていると「もっとシンプルに行動しろよ!」と思いますが、実際に内部にいる人は「しがらみが多すぎてこれが限界!」という感じなんだろうなぁと思いました
一応、以下に本書で解説されている財務省の歴史の粒度を示しておきます
- 大蔵省の誕生(1873~1923)
- 日本の最強官庁へ(1924~1931)
- パンドラの箱(1932~1945)
- 復興から高度経済成長へ(1955~1965)
- 三角大福、赤字国債、消費税(1965~1982)
- 失われた十年(1982~1996)
- 平成と未来の日本(1997~2011)
〆
コメント