トミー・エマニュエルが選ぶ必聴のアコギアルバム10選

“Tommy Emmanuel picks 10 essential acoustic guitar albums”という記事の和訳+解説です

Tommy Emmanuel picks 10 essential acoustic guitar albums
"Music is only about the feeling – virtuosity is secondary"

Tommy Emmanuelがお勧めするアコースティックギターのアルバムを10枚選び、その魅力を解説している記事です

Tommyの音楽性を作り上げた10枚のアルバムと云っても過言ではないでしょう

音楽の雰囲気がわかりやすいように、参考動画のリンクも追加しました

Tommyの音楽性に興味がある方は、是非チェックしてみてください

トミー・エマニュエルが選ぶ必聴のアコギアルバム10選

ただ速弾きさせるだけなら猿にでも訓練可能です。しかし、音楽に魂を込めるというのは、そこに魂がないのであれば、できるものではありません。

Chet Atkins(チェット・アトキンス)を聴くとき、そこに魂を感じます。またChetとJerry Reed(ジェリー・リード)の共作のアルバムを聴くと、今でも驚きます。音楽が彼らの心に息づいているのがわかるからです。

音楽は感情が第一です。演奏の妙技は二の次です。世界にはすごい演奏をして人々の目を引こうとするギタリストで溢れています。彼らは素晴らしいギターを持ち、美しい音が出るマイクを使用し、見栄えの良いビデオを撮ります。しかし、それらの行為に心は宿らないのです。彼らは追いつき・追い越すことに囚われすぎており、本当に意味のある好機が訪れたときに、ボートに乗り損ねてしまいます。

ある素晴らしいアルバムは、特にそれがアコースティックギターのアルバムであれば、素晴らしい刹那のようなものであり、特別なことであり、何度でもその特別な体験を与えてくれます。ここで紹介するアルバムは、素晴らしい、力強い写真のようなものです。それでいて、年を経ても全く色あせることがありません。これらのアルバムは、録音された当時のままに、その力強さを維持しています。

Chet Atkins/Merle Travis – The Atkins-Travis Traveling Show (1974)

今回の10枚のアルバムリストの中でもナンバーワン、最重要かつあなたが手にすべき一枚は、Chet AtkinsとMerle Travis(マール・トラヴィス)による“The Atkins-Travis Traveling Show”です。もし無人島に一枚レコードを持って行けと云われれば、この一枚を選ぶでしょう。

完璧からは程遠いのですが、それでも美しいアレンジとアイデアに満ち溢れています。もっとも私を惹きつけるのはChetのサウンドです。Chetのスチール弦のアコースティックギター演奏を聴く機会は少ないのですが、彼がそれをするとき、その演奏はとてもクラシックで、ピュアなサウンドをしています。彼のアルバムはひとつ残らず、あなたの期待を裏切らないサウンドです。

このアルバムでのChetの演奏は、私が目指す演奏家としてのすべての基準となりました。もちろんMerle Travisの演奏も美しいですよ。すべてが素晴らしいアルバムです。

Chet Atkins/Jerry Reed – Me And Jerry (1970)

このアルバムに収められている曲は、どれも何かしら学ぶことがあります。Jerry Reed(ジェリー・リード)のソロ演奏が華々しく、Chetはナイロン弦のデル・ヴェッキオ製[1]ブラジル製のガットギター。チェットが使用していたことは有名ギターを使い、いくつかの曲ではエレキギターも使用しています。

このアルバムは、歌がなくてもとても多様で面白いアルバムになることを教えてくれます。いつも聴くたびに新しい発見があります。誇張しすぎず、地味になりすぎず、ちょうど良い感じです。アレンジは優雅でありながら、その無理のない自然な感じは本物とは何かを教えてくれます。すべてがうまい具合に配置されているのです。Chetの音楽の美しさと云えるでしょう。Chetらしさに溢れたアルバムです。

Jerry Reed/Chet Atkins – Me and Chet (1972)

追求し続けるためにはより一層の継続が必要です。このアルバムは、前作“Me And Jerry”から続く二人の対話です。悪いところはひとつもありません。1枚目のアルバムの時点で彼らのキャリアは十分成熟してます。

“Jerry’s Breakdown”は最高の曲で、Chetのソロ演奏も素晴らしい。当時このような演奏をする人は誰もいませんでした。ピアノ演奏とバンジョー演奏が入り乱れるような演奏です。Fats Waller(ファッツ・ウォーラー)やRay Charles(レイ・チャールズ)的な要素を加えたのです。Jerry Reedはそれをやってのけました。

この二作のアルバムの他のお気に入りの点として、録音方法が挙げられます。ヘッドホンで聴いてみてください、すべての音がそのままです。イコライザーの痕跡は見当たりません。楽器のそのままの音を楽しめます。それゆえとても自然なサウンドです。

Chet Atkins/Doc Watson – Reflections (1980)

このアルバムは、二人の演奏者とそのスタイルの完璧な出会いと云えます。このアルバムでのDoc Watson(ドク・ワトソン)はとてもホットです。もちろんChetもですが。この録音をしているときは、二人とも最高潮の時期だったのではないかと思います。

Docの伝統的なカントリー・フラットピッキングとChetの生き生きとしたフィンガースタイル・ピッキングは、これらのスタイルの組み合わせの素晴らしい模範を示しています。それに加えて、すべての音がきちんと完璧に配置されており、それでいて感情も十分に表現されています。

Andres Segovia – Andres Segovia: Centenary Celebration (1994)

初期の頃のAndres Segovia(アンドレス・セゴビア)の録音を多く聴くと、音の表情や音量の変化についてとても勉強になります。当時のレコーディングは、部屋にギターを構えた彼だけが居たことを忘れてはなりません。マイクはあったでしょうが、おそらくヘッドホンはしていなかったでしょう。そのため、マイクを通して彼の演奏がどう料理されるかはわからないわけです。彼は自分の演奏にただ没頭したはずです。

お勧めしたいSegoviaのアルバムはたくさんありますが、初期のレコーディングを集めたボックス・セットもあります。4枚目のアルバムに彼が自分の人生について語っている音声が収録されているのですが、実はこれが私のお気に入りです。彼の声って素敵ですよね。

John Williams – John Williams Plays Bach (2002)

ギター奏者としてバッハに挑むということは、本当にその能力と勇気が必要とされます。そして、なんとしたことか、彼はそれを完璧にやってのけたのです!

John Williams(ジョン・ウィリアムス)のサウンドは、バッハの音楽にはぴったりです。私がやっても上手くいかないと思いますが、彼は上手くやっています。彼はこの音楽のミリ秒単位まで理解しています。どこで抑えるのか、どこで押し出すのか、いつ残響を残すのか、いつスタッカートをかけるのか。全体を通して素晴らしい演奏です。

Stephen Bennett – Ten (2002)

Stephen Bennett(ステファン・ベネット)はバージニア州の出身です。彼は普通のアコースティックギターに加えて、ハープギターも演奏します。このアルバムはとても好きです。演奏は素晴らしく、すべてが美しく録音されており、Stephenの作曲は途方もない出来です。

彼のスタイルは混じりけがなくとても奇麗です。つまり、ギターとマイクだけですね。彼はそれ以上のものを必要としないのです。このアルバムを聴くと、上手く響くメロディとコードの勉強にもなります。彼の演奏にはきめ細かな巧みさがあります。左手が静かなのも良いですね。彼の演奏には静寂を感じます。

このアルバムにはいくつかの曲が収録されていますが、その曲たちを聴くたびに、3度、4度と繰り返し聴いてしまいます。とても目覚ましい曲たちです。

Don McLean – American Pie (1971)

実際、これはボーカルアルバムなのですが、そのギター演奏、アレンジを聴いてみてください。特に重要なのは曲のイントロ部分です。これらの曲はどれもとても美しいです。Don McLean(ドン・マクリーン)は1960年代のマーティンサウンドです。このサウンドは生粋のフォークシンガーのものと云えるでしょう。

このアルバムの曲もギター演奏もとても好きです。すべて素晴らしい。皆さんが知っている大ヒット曲“American Pie”は云うに及ばず、“Vincent”という曲も有名です。また“Empty Chairs”“Sister Fatima”もチェックしてみてください。とても華麗な曲です。ギター演奏とDonのボーカルの配置はとても鮮やかです。[2]Tommy EmmanuelはDoc McLeanの“Wonderful Baby”という曲をカバーしている。

James Taylor – Dad Loves His Work (1981)

James Taylor(ジェームズ・テイラー)のアルバムを一枚選べと云われても困ってしまうのですが、あえて選ぶならこの一枚です。彼独特のギタースタイルが確立されています。当時は実験的に色々なお手製ギターを使っていたのではないかと思います。サウンドは度肝を抜かれるようなものではありませんが、それでも彼の演奏や彼がやっていることはとても特別です。

彼の伴奏により生み出される空間がとても好きです。彼は素晴らしいギタープレイヤーであり、すべてのパートの一部始終を把握しています。何を加えて、何を省くかがわかっているのです。作曲力は正しいアプローチ方法を必要とします。Jamesはその方法がわかっているのです。

Django Reinhardt – The Best Of Django Reinhardt (1996)

Django Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)から学べることは、どんなことであれ驚かされます。なので彼からできる限りのものを得たいと思う場合は、ボックスセットを買いましょう。

彼は私が感化を必要とするときに聴くギタリストのひとりです。彼の音楽を聴いて、完全に活性化されてから演奏の準備に入ります。彼の成し遂げたことすべてには品があり、この上ないものです。彼は火傷の怪我のため、弦の押さえ方に不自由がありましたが[3]Djangoは左手の人差し指と中指だけでギターの弦を押さえることが多い。速弾きなんかを見ると逆に見事に見える、それがむしろ彼の音楽性を信じられないくらい高めました。目の前で演奏しているのを見たら「どうやって弾いているんだ?」となることでしょう。

彼の演奏にはリズムの跳ねやコミカルな部分があります。彼はこのような演奏スタイルの父と云えます。彼が戦争中にフランスで確立した奏法は今でも愛されています。その後、ロンドンで録音したアルバムのギターのサウンドも素晴らしいものです。

References

References
1 ブラジル製のガットギター。チェットが使用していたことは有名
2 Tommy EmmanuelはDoc McLeanの“Wonderful Baby”という曲をカバーしている。
3 Djangoは左手の人差し指と中指だけでギターの弦を押さえることが多い。速弾きなんかを見ると逆に見事に見える

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