ジョーゼフ・キャンベルとビル・モイアーズの対談を書籍にした「神話の力」を読みました
神話とは何か?について、二人の禅問答のようなQ&Aが延々と続く本書
ぼーっと読んでいると「あれ?なに云ってるか意味わかんない」となってしまいます
論旨から脱落しないためには集中力を要する本です(はまる人ははまると思いますが、合わない人は早々に脱落しそうな本です)
本書のメッセージをひとつ拾うとしたら「内面的な価値(自分にとっての無上の喜び)を忘れないための生き方を神話は示してくれる」でしょうか
本書の感想
神話とは何か?
「神話とは何か?」という問いに対して、「それは~ですよ」というようなわかりやすい答えを示してくれるような甘い本ではありません
例えば、神話とは「宇宙の歌」であるとキャンベル先生は云います
「曲名は知らずとも、我々はそれに合わせて踊っているのだ」と
…つまりどういうこと???となるような、分かったような分からないような、答えをはぐらかされているような、そんな問答が非常に多いのですが、ここで云いたいのはおそらく「神話的イメージは無意識のうちに人々の間で共有されている」ということなのでしょう
人間が逃れることのできないもの、例えば、他の生命を殺して食べるとか、死への恐怖とか、生殖の欲求とか等々、そういったものの隠喩で神話は構成されており、それゆえ無意識のうちに人々の間で共有されるイメージとなりえるのかなと個人的には理解しました
神話の機能
「神話は何のために存在するのだろう?」という問いに対しては、以下のような4つの機能として説明がされています
- 神秘的な機能:畏怖の念を形成する
- 宇宙論的な機能:宇宙の形を示す
- 社会学的な機能:社会秩序を与える
- 教育的な機能:人間らしい生き方を示す
神話に親しむことによって、これらの観念が形成されていきます
なお、社会秩序のような項目もあることから、神話とは変化していくものらしいです
例えば、猟採集から農耕生活に切り替わった際には、種子が無限サイクルの象徴として登場する神話が増えたりするようです
神話の変化について考えると、現代社会は神話をアップデートできているか?という疑問が湧いてきます
神話をアップデートせよ
現代社会風の神話ってどんなだろう?と考えたときに、個人的には中心のない世界観というキーワードが頭に浮かびました
歴史的にみれば、地球中心の世界観があって、次に太陽中心の世界観が来てとなりますが、今は中心のない世界観の時代なのではないかと
「すごい宇宙講義」の本で云うところの「宇宙は閉じた空間で中心などない」というやつです
こういう世界観に基づいた神話というか物語って、未だに見ない気がするのですが、誰かがどこかで既に書いているのでしょうか?
中心がないことの隠喩に満ちた神話、そういった物語から現代社会が得るものは多いのではないかと思いました
ドラゴンは翼をもった蛇
ここでは神話を読み解くコツを紹介したいと思いますが、例えば、ドラゴンが出来てきた場合は以下のように考えることができます
- ドラゴン:翼をもった蛇の隠喩
- 翼:精神的な飛翔の象徴
- 蛇:地上に縛り付けられたものの象徴
つまりドラゴンとは束縛からの解放の象徴であり、ドラゴンを倒すことはその束縛からの解放を意味すると読めるわけです
また、蛇は脱皮することから、生まれ変わりの象徴として読める場合もあります
神話を読み解くときは、とにかくイメージを膨らませることが必要らしいです
普段の私たちの思考は、言語的・論理的・羅列的な場合が多いので、この辺のイメージ先行の考え方・読み解き方は訓練がいるなと思いました
本書の読み方
神話に詳しくない一般人が「神話って何?」という答えを求めて本書を読み始めると挫折してしまうかもしれません
本書で以下のような箇所があります
旅に出て、目的地がどんどん遠のいていくのを経験すると、ほんとうの目的は旅そのものであったことに気づく
この箇所を読んだときに、本書の読み方もこれが良いのかもと思いました
つまり、神話って何だろう?という疑問から読み始めて、その答えがもやもやしていつまでたってもわからない、となり、最終的にはこのもやもやと考えながら本書を読む過程自体に意味を見出すというものです
「嫌われる勇気」で云うところの、キーネーシス的生き方ではなく、エネルゲイア的生き方につながる読み方だなと思いました
そんな哲学的な思考を鍛えたい方は、本書を読んでみてはいかがでしょうか〆
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