「小村寿太郎とその時代」に続き、片山慶隆氏の著書「小村寿太郎 近代日本外交の体現者」を読みました
本書の感想
小村寿太郎について書かれた良書
前回読んだ「小村寿太郎とその時代」は、小村寿太郎よりも「その時代」にフォーカスされた書籍であったため、小村寿太郎本人について詳しく知りたいと思う人には若干消化不良を起こす内容かもしれません
一方、本書「小村寿太郎 近代日本外交の体現者」は、小村寿太郎を軸として時系列にその活躍を解説してくれるので、小村寿太郎という人物について知りたい人には最適な本です
小村寿太郎の評価が分かれる理由
前回読んだ「小村寿太郎とその時代」では、小村寿太郎について若干批判的な評価の匂いがしていました
一方、本書「小村寿太郎 近代日本外交の体現者」では、好意的・擁護的な立場が取られています
このように評価が分かれる理由について、以下のふたつの要素があるのではないかと思いました
- 実績の大半が帝国主義外交の賜物であるから
- 結局最後は第二次世界大戦で敗戦するから
小村寿太郎の実績(日英同盟、不平等条約改定、外相在任期間通算7年3ヶ月、等々)を考慮すると、彼が有能な外交官であったことは疑いようがありません
しかし、その実績を現在において手放しで賞賛するのは難しい側面もあります
例えば、小村は韓国併合に向けて外交上の多くの課題を処理しましたが、帝国主義的な価値観が否定される現代社会では、この実績を強調するのは危険な側面もあります(例え、当時の判断としてはそれが最善であったとしても)
また、第二次世界大戦の敗戦という大きな結果の前では、それ以前の帝国主義的な成果や外交手段がすべて敗戦の一要因としてカウントされてしまう傾向も感じます
要するに、不要な軋轢を生むのを避けたいのであれば、小村寿太郎についての評価は控えめにしておいたほうが現代社会においては無難、という背景があり、若干批判的な評価が散見されるのかなと思いました(小村さん、ちょっと可哀想)
社交嫌いの小村は乱世で力を発揮する外交官?
社交嫌いの小村は「普段から信頼関係を築く」という平穏時の外交官の仕事が苦手でした
なので、どうしても平穏時は「社交嫌い」という外交官としての負の側面が強く出てしまいます
しかし、それでも多くの実績を残せた理由は、小村が生きた時代が基本的に乱世だったからです
小村の特徴として、本書では以下のような内容が挙げられています
- 秘密外交・帝国主義外交
- 政党による外交への干渉に否定的
- 国民の政治参加に否定的(非民主主義・エリート主義)
- どの国も贔屓しない(パワー・ポリティックスで外交を捉える)
どちらかと云うと「黙って俺について来い」的な、ワンマン外交的な雰囲気を感じます
乱世で民主主義は機能しないという話も聞くので、乱世に片足を突っ込んでいそうな現代においては、小村外交を研究し見直してみても良いのかもしれません〆
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