映画「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」を観ました
一言で云えば、茶道を通して世界を味わう映画でしょうか
心が落ち着く良い映画だと思いました
映画の感想
意味なんかわからなくても良いから、とにかくそうするの
茶道教室に通い始めた生徒(黒木華、多部未華子)は先生(樹木希林)に度々尋ねます
「どうしてこうするんですか?」
これは茶道を知らない人なら、みんなが抱く感想ではないかと思います
一見、意味不明なルールや決まりごとが多すぎる
以下のようなイメージです
まっすぐ効率的(時短)で行けばいいのに、くどくど回り道をしているような感覚です
頭で考えるとどうしても釈然としない
しかし、先生(樹木希林)はこの問いに対して以下のように答えます
「意味なんかわからなくても良いから、とにかくそうするの」
素晴らしき様式美の世界
効率を優先する現代社会において、茶道的な様式美に拒否反応を示す人も多いことでしょう
しかし、様式美というものが一概に悪いもの・無意味なものとは云えないと思うのです
型が決まっているということは素晴らしい一面もあります
型が決まっていることのメリット
①頭で考える必要がない
頭であれこれ考える必要がないので楽です
繰り返し練習して身体で覚える
有意識でしかできないことが無意識でできるようになったとき、人は快感を覚えるものです
②人と人を繋げる装置になる
型は誰かが決めたものなので、人に教えてもらう必要があります
頭の良い人が一人で考えたからといって体得できるものではありません
よって、型は人と人を繋ぐ装置とも云えます
➂変わらないものを実感できる
型は環境に左右されません
雨の日も、暑い日も、外で戦争をしていたって型は変わりません
変わらない型を持つことによって、それを実践することで平静を取り戻したり、自分の中に精神的な軸を設けたり、時代が変わっても簡単に変えてはいけないものを実感したりできるのではないでしょうか
茶道はエネルゲイア的活動である
映画を観ていて茶道もエネルゲイア的な活動なのだと思いました
エネルゲイアとはかの哲学者アリストテレスが提唱した概念で、対比語としてキーネーシスがあります
- エネルゲイア:目的が内在し、終点をもたない完全な行為
- キーネーシス:目的が外在し、そこを終点とした不完全な行為
哲学用語なので説明を読んでも意味がよくわかりませんが、要するにエネルゲイアとは、目的に向かって一直線に進む活動ではなく、瞬間瞬間の行為に意味(目的)がある活動という意味だと理解しています
茶道も所作のひとつひとつの刹那を味わう行為なのではないでしょうか
日日是好日(にちにちこれこうじつ)の意味
「日日是好日」は元は禅語のようですが、その意味は読んで字のごとく「毎日が素晴らしい日」です
映画の最後では主人公(黒木華)が「五感を使って季節の移ろう日々を全身で味わう」的な意味で得心していました
茶道の精神として「一期一会」が有名ですが、この「日日是好日」も「二度とないこの刹那を精一杯楽しむ」という共通の精神が根底に流れているように感じました
おわりに
映画「日日是好日」は茶道の世界を楽しさ・奥深さを上手に表現した良い映画だと思いました
茶道の心得がある人はには、「茶道あるある」がたくさん詰め込まれた映画でもあるので、より一層楽しめると思います〆
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