「夜空の星が綺麗…私ってなんてちっぽけな存在なんだろう」
「宇宙に果てはあるのかしら?」
「私たちの住む世界ってそもそも一体何なんだろう?」
宇宙について考え出すと疑問が尽きませんよね
そんな疑問に答えてくれる著書「すごい宇宙講義」を読みました
ブラックホール、ビッグバン、暗黒物質、暗黒エネルギー等々これらに関して基本的な知識を習得できる著書です
宇宙の話になるとスケールが大きすぎるためイメージが難しいところがありますが、本書は理解を促す適切な比喩・例え話を交えつつ話を進めてくれるので非常にわかりやすいです
このわかりやすさのおかげで、読んでいてワクワクが止まらず一気に読んでしまいました
本書の感想
一応以下に本書を読んだ上で印象に残った箇所を整理しますが、基本的な用語や現象の解説は割愛するので、興味がある方は是非本書を読んでみてください(宇宙に興味がある方なら読んで損はない本だと思います)
宇宙に果てはあるのか?
結論から書いてしまうと、宇宙に果てはありません
その理由は、宇宙は閉じた空間であるからです
これを聞いて「ああ、なるほど」と思える人は少ないかもしれませんが、本書を読めばこの辺のイメージも掴むことができます
人間は3次元(以上)の閉じた空間をイメージできない
「宇宙は閉じた空間である」と云われて「???」となるのは、人間が3次元(以上)の閉じた空間をイメージできないためです
逆に言えば、2次元の閉じた空間であればイメージできます
この説明で使われる風船の例え話が非常にわかりやすかったです
3次元の住人である人間から見ると風船の2次元表面は閉じた(有限だけれども、果てがない)空間であることはわかりますが、仮に風船の表面にペーパーマリオみたいな2次元の登場人物を考えてみると、ペーパーマリオには自分の空間が閉じているかはわからないことでしょう
宇宙が何次元なのか?という議論はありますが、少なくとも3次元以上なので、人間には宇宙が閉じた空間であることはイメージできないのです
宇宙に中心はあるのか?
答えは、宇宙に中心はありません
これも風船の例で考えるとわかりやすいのですが、ペーパーマリオから見た風船の2次元表面には中心がないことと同様です
ビッグバン理論なんかを聞いていると、初めは小さな点から宇宙が始まったのであれば、宇宙に中心があっても良さそうなものですが少し不思議な感じがしますね
というか、宇宙の膨張を地球から観測すると、地球を中心に膨張しているように見えるのですが、これも風船の表面にマジックで複数の点を打ってから膨らませるとわかりやすいです
この場合、どの点から見ても自分を中心にして平面が広がっているように見えます
風船の例え話は強いですね(笑)
なお、宇宙の膨張速度は物体が移動しているわけではないので、光速を超えることがあります
浦島太郎に一体何が起こったのか?
帰ってきたら龍宮城で過ごした時よりも遥かに長い年月が経っていた浦島太郎
原因として以下のふたつが考えられます
- 浦島太郎を乗せた亀の移動速度が光速に近かった
- 竜宮城がとんでもない重力だった
これを理解するためには相対性理論についての知識が必要です
相対性理論ってどうやってできたの?
アインシュタインが考案した特殊相対性理論と一般相対性理論
細かい数式はさておき、一体どうやってできたのかというと、ある原理を出発点として理論を構築したそうです
特殊相対性理論を支えるふたつの原理の柱は以下です
- ①相対性原理:力学法則はどの慣性系においても同じ形で成立する
- ②光速度不変の原理:真空中の光の速さは光源の運動状態に無関係で一定である
①の相対性原理は要するに、地表でも電車の中でも同じようにキャッチボールできるよね、ということです
なお、慣性系でない場合は(電車が加速している場合は)、地表と同じようにキャッチボールできません
②の光速度不変の原理は、言葉の通りなので理解しやすいと思います
次に、➂の原理を追加することで一般相対性理論が完成します
- ➂等価原理:局所的には慣性力と重力は等価である
➂は要するに、月や人工衛星は遠心力と重力が釣り合って地球の周りを回っているから、遠心力と重力は同じ「ちゃんとした力」として考えていいよね、ということです
浦島太郎、再び
特殊相対性理論より、光速に近づくと時間がゆっくりと進むことが云えます
そのため「浦島太郎を乗せた亀の移動速度が光速に近かった」となるわけです
一般相対性理論より、重力が強いと時間がゆっくり進むことが云えます
そのため「竜宮城がとんでもない重力だった」となるわけです
この話のポイントは、特殊相対性理論は重力を考慮しない理論ということでしょうか
ビッグバン理論はどうやってできた?
「なんか爆発して宇宙ができた」くらいの知識しかなかったビッグバン理論
この理論の経緯はざっくりとは以下です
- ①赤方偏移の観測:地球に届く光(スペクトル)が赤い側(エネルギーが低い側=波長が長い側)にずれている
- ②星は遠ざかっている?:ということは逆に昔は一箇所に集まっていた?
- ➂宇宙が晴れ上がり:その瞬間の光を観測できるのではないか?
- ④宇宙背景輻射の観測:2.7ケルビンの黒体輻射相当を実際に観測
これもこれだけの記述で「おお、なるほど」とはならないと思いますが、詳細については本書を読んでいただければと思います
インフレイション理論
ビッグバン理論だけでは以下の事実が説明できません
- ①地平線問題:膨張している宇宙の温度が均一
- ②平坦問題:宇宙の地平線・空間は曲がっていない
- ➂モノポール問題:不連続な(単結晶でない)空間ではモノポールが観測されるはずだが、観測されない
これらの問題を説明するために生まれたのがインフレイション理論です
インフレイション理論とは、宇宙は誕生して間もない僅かな一瞬の間(10の-36乗秒くらい)に、とてつもない勢いで膨張したという理論です
別の云い方をすると、宇宙の膨張速度は常に同じでなはい、と表現することもできます
水を温め続けるとどうなるか?(宇宙の始まりを再現する)
ビッグバン&インフレイション理論によると、宇宙の始まりは小さな点になります
この点にすべての物質が詰まっているので、それはもう温度が高いです
ということは、物質をどんどん高温にすれば宇宙の始まりの状態を再現できるのではないかとう発想になるわけです
それでは水をどんどん熱してみましょう
- 0度以下:氷
- 0度~100度:水
- 100度以上:水蒸気[1]氷⇒水⇒水蒸気のような状態変化を相転移と云う
- 3000度:電子が原子核から飛び出す
- 10の11乗度くらい:陽子と中性子がばらばらになって原子核が崩壊
- 10の12乗度くらい:クォークがばらばらになって陽子が崩壊
- 10の15乗度くらい:「弱い力」と「電磁力」が分離する[2] … Continue reading
- 10の28乗度くらい:「強い力」と「電磁力(含む弱い力)」が分離すると予想される(加速器での再現が不可能な温度)
- 10の32乗度くらい:「重力」と「電磁力(含む弱い力、強い力)」が分離すると予想される(加速器での再現が不可能な温度)
実際の再現にはもちろん火で加熱するのではなく、加速器で原子にエネルギーをどんどん与える方法のようです
ただ高温になってくると加速器でも再現不可能になり、その領域の結果は大統一理論からの予測になります
なんでも物理学の界隈では99.99%正しいと思われることは「兆し」であり、99.9999%正しいと思われて初めて「発見」と呼ばれるらしいです
PET検査の原理
PET(Position Emission Tomography)検査とは、ガンを発見するための検査のことです
ガン検査が宇宙となんの関係があるの?と不思議に思われますが、ちゃんと関連があるのが面白いところです
対消滅を利用する
この世には反物質(反粒子)というものがあります
反物質(反粒子)とは、質量やスピンが同じで、電化が逆の粒子です
物質⇔反物質の関係は以下のような感じです
- 電子(-)⇔陽電子(+)
- 陽子(+)⇔反陽子(-)
- 中性子⇔反中性子
中性子は元々電化が±0じゃん!となりますが、中性子を構成するアップクォーク/ダウンクォークのレベルで電化が逆になっているので半中性子も存在します
さて、この物質と反物質は対消滅する特性を持っています
対消滅とは、物質と反物質が触れた瞬間にガンマ線を出して消滅する現象です
この対消滅をPET検査では利用しています
放射性同位元素を混ぜ込んだ薬(トレーサー)を体内に摂取し、放射性同位元素から放出する反物質を利用して体内で対消滅を発生させ、発生したガンマ線を検出してガンの部位を特定するという、ウルトラC級というか、なんか魔法みたいな技術です
宇宙(というか素粒子物理学)について勉強するとこういうことも理解できるようになるのが面白いです
おわりに
現在の人類の英知を集結しても今だにわからないことだらけの宇宙
勉強するとわくわくする気持ちを禁じえません
そんな宇宙の内容を非常にわかりやすく解説してくれる本書
宇宙に少しでも興味があるのであれば、読んで全く損のない本です〆
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