映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」を観る

映画「わたしは、ダニエル・ブレイク(I, Daniel Blake)」を観ました

2016年のカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞したこの作品

要約すると「働けなくなった途端にお荷物扱いかよ!今まで真面目に働いてきたんだからもう少しリスペクトしろよ!」という映画です

主人公のダニエル・ブレイクは、大工として40年間働き、妻の介護もし、妻に先立たれてからは心臓を患い働けなくなった59歳です

真面目に税金を納め、止むに止まれぬ事情で就業不能となった境遇を考えると、国の制度が手を差しのべてほしいところですが、国の緊縮財政の煽りを食らって失業手当の申請が却下されてしまいます

しかも、却下理由の説明が意味不明であり、抗議してもマニュアル通りのお役所回答が返ってくるだけで埒があかず、無意味な事務手続きの連続にうんざりしたダニエルは投げやりな態度を取ってしまい、生活は困窮の一途を辿る…そんな心の晴れないお話です

ダニエルは紛れもない善良な市民ですが、ただの失業者として十把一絡げにして扱われてしまうところに、国の制度の不条理を感じます

無条件で年上を敬え、と云う意味ではありませんが、経歴を重ねた人に対しては敬意ある態度で接することが必要であると思いました

もうひとりの主要な登場人物としてシングルマザーのケイティ・モーガンがいます

ケイティは、父親の違う二人の子供をつれて、フードバンク(配給)に通う20代前半の女性で、こちらもかなり生活に困窮しており、最後はやはりというか風俗に身を沈めます

驚いたのは、風俗業者の仕事斡旋の巧妙さです

万引きがバレる→ 許して欲しければ風俗で働け

ではなくて、

万引きがバレる→お金に困ってそうだから見逃してくれる+商品もくれる(優しい)→仕事がないなら力になる、電話してこい(さらに優しい)→電話する→女性を紹介される→私はあなたの味方だから安心してと云われる(信頼感)→風俗を紹介される

という感じで、恐怖で支配するのではなく、一度信頼関係を気づいてからの巧妙な風俗落としです

ケイティも悪い人ではないのですが、人間として尊重された扱いを受けているのか云われると、うーん、となってしまいます

とにかく、色々と考えさせられる映画で「人間の尊厳とは何か?」について考えたい人にはおすすめしたいと思います

なお、ダニエルとケイティ、またその子供たちのやりとりはとても人間味に溢れていて、心温まるシーンです〆

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