成田悠輔「22世紀の民主主義」を読む

「高齢者は集団自決すればいい」

そんな過激な発言でメディアを賑わす成田悠輔氏の著書「22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる」を読みました

成田節の巧みなレトリックで書かれた本書で読んでいてとても楽しいかったのですが、議論している内容はかなり難しかったです

数式が出てくるというような難しさではないのですが、「民主主義とは何か?」みたいな根源的な問いに近いものがあり、こういう抽象度の高い議題に対して論が展開できるのは素晴らしいなと思いました

民主主義と資本主義

今の世界がベストな姿ではなくて、もしろベターでもなくて、なんかヤバそうな雰囲気を醸し出している、そんな予感を感じます

しかし、「じゃあ、何が問題なのか言ってごらん」と詰め寄られてもこの不安は言葉にはならなくて、ただ口をパクパクさせるのが関の山です

本書を読みながら「何が問題なのだろう」とかなり考えましたが、やっぱりよく分からなかったです

日本の場合、政治は民主主義で経済は資本主義です

この制度が現代社会にうまくフィットしていないのでは?とか考えましたが、考え始めるとすぐに脳みそドカン!でよくわからんとなります

すべての原因は不平等

ただちょっと思ったのは、結局「上手くいかない雰囲気」の根本原因は人間の能力や運が不平等であることなのではということです

インターネットやSNSの進化により、情報の共有・拡散の速度が2000年代になって格段に向上しました

これによって、人間の能力や運が恐ろしく不平等であるという真実が、社会の隅々まで浸透しやすくなったという仮説です

不平等自体は今に始まったことではありません(昔からありました)

ただ一昔前は、それに気づく機会が限られていた、今の時代は毎日そのむき出しの真実に晒されています

そのため、「格差が拡大している」という勘違いが発生するし(成田氏曰く、日本の場合は格差が拡大しているのではなく、全員が貧しくなっているらしいです)、弱者を救う装置であるはずの民主主義も相対的に弱くなったように見えているのではと思いました

じゃあ、我々はこれからどうすればよいのかという話ですが、上記の仮説が正しいとすると2つの方法があります

  1. 不平等をなくす
  2. 不平等をわかりにくくする

1.のほうは別の言い方をすると民主主義の強化かもしれません

本書では政治家ではなくアルゴリズムで駆動させる「無意識民主主義」が提唱されていました

2.のほうは情報の流動性を意図的・人為的にコントロールすることになります

本書では、情報に税金をかけるような方法が提示されていました

ただ2.のほうは、表現の自由にも関わる話なので、やっぱり本丸は1.の民主主義の強化なのでしょう

そっちのほうが開放的で明るい未来が見える気がします

とまぁ、そんなことをあれやこれやと考えた本でした

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