トミー・エマニュエルが語るアルバム”The Colonel & The Governor”

“Tommy Emmanuel talks The Colonel & The Governer”という記事の和訳+解説です

Tommy Emmanuel talks The Colonel & The Governer
The Aussie ace on music theory and pushing fingers to the limit

Tommy Emmanuel(トミー・エマニュエル)とMartin Taylor(マーティン・テイラー)のギターデュオアルバム”The Colonel & The Governor”についてTommy自身が語っています

空前絶後のギターデュオアルバム誕生の秘話が明かされており、とても興味深い内容です!

トミー・エマニュエルが語るアルバム”The Colonel & The Governor”

“Colonel”と”Governor”という愛称はどこから来たのですか?

公式には、ケンタッキー州から私に”Colonel(大佐)”の称号が送られました。Martinのことはもともと私が”The Governor”と呼んでいました。イギリス英語で云うところのボスとかお頭とかNo.1といった意味ですね。私はAlbert Lee(アルバート・リー)のことも”The Governor”と呼んでいます。なぜなら、彼ら二人は誰よりも抜きん出た存在に感じてきたからです。Martinはかつてステージ上で私のことを「忌々しい興行師」と紹介しました。傑作でしたね。ひねりの効いた言葉です。

二人はいつ以来の知り合いですか?

確か初めてMartinを見たのは1990年代のTV番組でした。その放送で彼がどこに泊まっているのか情報を得たのです。そこで私は彼のホテルに電話を掛けて、彼にギターを持ってシドニーのステート・シアターまで来るように云いました。そして彼はその晩の私のショーに出演したのです。彼は狐につままれたような顔をしていました。

私たちは正反対の二人ですが、それでも上手くいきます。私はMartinをステージ上で自由に楽しく演奏させてあげられる最初のギタリストの一人だったと云っても良いと思います。彼は普段はもっとシリアスな人々と仕事をして椅子に座っているわけですから…[1]Martinがジャズ世界の人であることを指している。冗談交じりのコメントかもしれない。それに比べたら、私はステージ上で暴れる猿同然ですね!私たちは数年の間、録音する機会を待ちわびていましたが、ついにその機会が訪れたのです。私たちのスケジュールは滅多に都合が合わないのですが、それでも希に一緒に演奏するときは魔法みたいに上手くいきました。そのため、録音すべきだと感じていました。ファンを黙らせるために[2]ファンも二人の共作アルバムを待ち望んでいたという意味

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このカバーアルバムはひねりが効いていますよね?

そうですね。他の人の作品をアレンジする場合はいつもそれを心がけています。すべての曲で皆さんを驚かせなければならないですからね。今まで通り、普通に弾いた曲なんて皆さん聴きたくないでしょう?今回の選曲は皆さんの反応を試す良い機会となりました。

ツアーで私たちは別々の国にいましたが、候補曲をEメールでやり取りし、何回かスカイプで話して選曲しました。いくつかの曲は、例えば”I Won’t Last A Day Without You”なんかは、私たちが10代の頃から親しんだ曲です。それでもコードを変えて、私たちの曲と感じるようにしました。

世界はあっと驚くようなギター演奏を期待していますが、プレッシャーを感じましたか?

いえ、そんなことはないです。「完璧」を見せるわけではないので。演奏好きな二人のコラボレーションを窓から覗き込む感じです。テクニックだけに注目している人は、私たちが配慮している多くの些細なことを見逃すことでしょう。それは残念なことです。なぜなら、そこにこそ多くのことが詰まっているからです。

このアルバムはエゴを抑えたように感じますが…

え、そうですか?なんてことでしょう。ギタープレイヤーというものは、いつでもお互いにやりすぎないように注意している一方で、お互いにけしかけているものです。枝先に押し出されたら、それなりのものを返してやる。そのやりとりは心地よいものです。まぁ、それで落ちてしまったら、私はいつも相手の上に落ちるようにしていますが。

スポットライトを分け合うのは大変でしたか?

いえ、全然そんなことありませんでした。パート分けも簡単でした。云ってみれば、交互に弾き合う感じです。例えば、”Jersey Bounce”では大体はMartinがメロディーを弾いて、私が伴奏を入れています。一方”A Smooth One”では私がサビを演奏するので、Martinはメロを演奏します。気の合うダンサーと踊るような感じですね。どこに足を踏み出せば良いか自然とわかる感じです。

テイク数を重ねたとは思えないのですが…

そうですね。Martinはベッドから起き上がったらもう完璧です。昨年の7月のChet Atkins(チェット・アトキンス)の集まりで演奏のロードテストをしたのですが、結局それからスタジオに行き、二日後には録音は終わっていました。”Secret Love”以外はすべて即興です。”Secret Love”は私がアレンジを担当しましたが、ほかは全てジャムセッションでやりました。即興は勇気がいるかって?そうですね、大体の演奏家は、特にお互いを知っている場合は、スタジオに行ってこう云うのです。「OK、この曲はこんな感じで。とりあえず始めてみよう」。つまり私たちはただ飛び込むだけなのです。

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どんなアコースティックギターを使いましたか?

そうですね、メインで使ったのは、このツアーでも使おうと思っている、1930年製のMartin 0-17です。少し小ぶりで、木はすべてマホガニーです。少しDjango Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)のような音がします。1930年代や40年代のようなジャズ・サウンドにするためにサウンドホールに棒状のピックアップを搭載しています。Charlie Christian(チャーリー・クリスチャン)みたいな音とも云えるかもしれません。Martinも私も”AER Compact 60″のアンプを使用していますが、直接マイクで音を拾っていることも多いです。Martinが使っている比類なきギターにはマイクが付いていました。ピックアップを使わないときは、ダイレクトボックスに直接つないでいましたね。私もふたつのマイクを使っただけです。それがすべての機材です。

音に余計な処理をしていない感じですよね…

エフェクターは使っていません。ミックスの時に少しリバーブを挿しているかもしれませんが。”Down At Cocomo’s”という曲では、Martinが誰かの名刺をギターの弦の間に差し込んで震わせることでスチール・ドラムのようなサウンドを作っていましたよ!

いざという時のために他のギターを用意していましたか?

Robert Godin(ロベール・ゴダン)が「弾いてみてよ」と云ってプレゼントしてくれた新品のゴダン製”5th Avenue”のギターがありました。これは木はすべてメープルで出来ていると思います。とても美しいギターです。今までのモデルの中でも一番の出来なのではないでしょうか。かつてのモデルを弾いたときも良かったのですが、私の思う「一流」のサウンドには届いていない感じでした。新しいモデルは明らかにそのレベルに達していますね。

“Lullaby of Birdland”ではこのギターを使っています。録音はラインとマイクです。この曲は、二人のフーガ的な演奏から始まり、次にメロディが入ります。このメロディ部分をゴダンで弾いています。”Secret Love”では、ミッドレンジの音を綺麗に出したかったので、メイトン・カスタムEGB808を使用しています。私のツアーでソロでこの曲を弾くときも、このギターを使っています。

騒々しくないアルバムですね。何回か二人のくすくす笑いが聞こえてきますが…

マイクをそこに置いて、向かい合うように二人が距離を置いて座っているだけですからね。準備する必要のあるものは曲だけという感じです。そうしたらMartinが彼のソロの終わりまで解決してくれます。すべてがそのままのライブで進んで行きました。

例えば、”Down At Cocomo’s”ではMartinはカポを下に動かす必要があります。このとき静かにクールに動かすのではなく、私が「そうだ、キーを変えたほうがいいね」と声に出しています。すると彼がカポを下に動かして、そのまま演奏を再開します。これをライブでやると観客は笑ってくれます。

Martinの圧力を感じますか?それともあなたがMartinを圧迫している?

そうだと嬉しいですね。私たちは本当に違いますからね。たぶん聴いていてもその違いがわかるんじゃないかと思います。Martinは完全にジャズ畑の出身で、私は違います。なので、みんなが弾けるような定型的なフレーズも学んだことがありません。彼と仕事をすることで、代理コードやコードの考え方について大いに学びました。私は彼の1940年代のような美しいメロディ解釈が好きです。とてもリラックスした解釈です。こういう弾き方をする人は他にはいません。

こういう人が近くにいると、私はスポンジと化します。Martinが弾くコードは私にはとても良いです。なぜなら、耳が本当に目覚めますからね。”The Nearness Of You”のような曲の他の演奏家の解釈を今まで聴いてきましたが、Martinのコード解釈は他の演奏家とは違いますね。

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ギタリストとして申し分のないお二人ですが、自分が思う強みと弱みはありますか?

もちろんです。お互いの強みと弱みがわかっています。Martinとの仕事とは別に、私はいつも個人練習をしています。もちろん彼もそうですが、それでも私はMartinよりたくさん練習していると思います。さらに何を改善しようとしているかですって?モードについての知識ですね。私はモードや音楽的知識についてもっと学ばなければいけません。見てみてください。私は全然トレーニングされていないのです。楽譜だって読めないし、レッスンも受けたことがありません。すべて耳だけで演奏してきました。なので、いつも知識に飢えているのです。

時には私を助けてくれる人がいます。例えば、Frank Vignola(フランク・ヴィニョーラ)とかつて演奏した際に、「Frank、ここで何を弾いたの?」ときけば、彼は「Django Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)の十八番の半音ディミニッシュだよ」と答えてくれます。そうすると、私も理解することができて、他の多くの演奏に応用できました。彼が私にパン粉をくれて、私がそれでパンを焼いたというわけです。それが私のやっていることです。彼は私の持っていない知識を持っています。

Martinは楽譜が読める?

もちろんですよ。

今までに楽譜の読み方を勉強しようと思ったことはありますか?

かつて一度だけありましたが、その時に絶望しましたね。単に忍耐が足りないだけなのですが。10代の後半になって、オーストラリア・セッション・サーキットで仕事をするためには、色々な人から「楽譜を読めるようになったほうがいいよ」と忠告されるようになりました。問題は、その頃の私は既に多くの仕事があり、それをこなすことで精一杯の状態であったということです。楽譜なんてものは読めませんが、片手のバイオリニスト[3]Luther Caldwellのことと思われる。よりも忙しかったのです。とにかく、挑戦はしてみましたが全然上手くなりませんでした。身につかなかったのです。わかりますかね?

あなたとMartinのこのアルバムのツアーに何を期待して良いですか?

たぶん私たちを含めて、みんな感電したみたいになるんじゃないですかね。この音楽を一緒に演奏できることに気分が浮き立つでしょうし、すごい二人の凌ぎ合いになると思います。とても楽しめると思いますよ。

今までEric Clapton(エリック・クラプトン)、Chet Atkins(チェット・アトキンス)、Les Paul(レス・ポール)等々と共演してきましたが、誰に一番影響を受けましたか?

そうですね、もし服を着替えることで他のギタリストになれるとしたら、Djangoの服を着ますね。それで彼の音楽の源泉に至ります。彼は今でも私にとって最大級の人です。けれども、そういうギタリストは他にもたくさんいます。ここ5年間のJoe Satrian(ジョー・サトリアーニ)の仕事は、並外れた素晴らしいものです。Frank Vignolaも素晴らしい仕事をしています。周りの人に影響を与えるギタリストはたくさんいますよ。〆

References

References
1 Martinがジャズ世界の人であることを指している。冗談交じりのコメントかもしれない
2 ファンも二人の共作アルバムを待ち望んでいたという意味
3 Luther Caldwellのことと思われる。

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