司馬遼太郎「新史太閤記」を読む

前回紹介した司馬遼太郎の小説「国盗り物語」に続いて「新史太閤記」を読みました

豊臣秀吉を主人公に扱った作品で1966~1968年(司馬氏40代前半)の連載です

秀吉の少年時代から関白になるまでを主に描いており、豊臣政権樹立後のエピソードはほぼカットされています

そのため、建築道楽や朝鮮出兵のような秀吉の負のイメージのエピソードは語られないため、ただひたすらに出世の階段を駆け上る「秀吉ってすごい!」という明るいイメージの小説となっています

なお、「国盗り物語」でも秀吉は登場するため、「新史太閤記」とのエピソードの重複も楽しめます

人を動かす天才・秀吉

一介の百姓・浮浪人の境遇から、己の実力だけで天下人(政権のトップ)まで上り詰めた秀吉

実力次第で大きく取り立ててくれる主君・織田信長に仕えていたとは云え、この奇跡のような偉業を成し遂げた秀吉が後世に与えた希望・勇気は計り知れないものがあると思います

現代で言えば、中卒で総理大臣みたいなものでしょうか

いや、それ以上で、義務教育を受けられなかった無戸籍者の境遇から総理大臣になるくらいのインパクトがあると思います

喧嘩上等の戦国時代で猿のような小男に生まれつき、戦闘の腕っ節で成り上がることは半ば諦め、ただひたすらに知力・策略の力で次々と武功を立て、周りの人心を掌握していく姿がとても印象的です

本小説での秀吉のキャラ設定は、ズバリ「声が大きくて、陽気な働き者」です

とてもシンプルなキャラ設定ですが、考えてみれば、現実世界でもこういうシンプルな性格・気質が成功の秘訣な気もします

小説を読んでいると秀吉は「人を動かす天才」なのだなと思えます

「人を動かす」と聞くとデール・カーネギーの著書「人を動かす」が思い浮かびます

人を動かす三大原則に当てはめながら、秀吉の行動を振り返ってみたいと思います

①盗人にも五分の理を認める

盗人にも盗人なりの言い分があるということです

秀吉は敵に対して寛容で、無駄な人殺しは好まず、これにより敵が降伏しやすい環境を作りました

敵を容赦なく殺す刻薄無情な主君・織田信長とは対照的です

②重要感を持たせる

基本的には人の悪口・陰口を云わず、とにかく明るく褒めまくるスタイルを貫く秀吉

これにより、相手に重要感を持たせることに成功していると云えます

③人の立場に身を置く

秀吉は常に、周りの人が自分のことをどう思うかを考えて行動します

自己満足のためだけに威張ったり、功績を鼻にかけたりすることは絶対しない

血統主義の時代背景において、出自の悪い自分に周りが協力してくれるにはどうすればよいか?を常に考えます

秀吉の辞世の句

そんな戦国ドリームを掴んだ秀吉の辞世の句はこちらです

露と置き 露と消えぬる わが身かな

浪華のことは 夢のまた夢

要は、「夢の中でみる夢のような信じられない人生だった!」ということです

小説を読み終え、こんな偉業を成し遂げた人物が実在したとは信じられない気持ちになります

夢をありがとう!秀吉!

真桑瓜について

瓜の話が印象に残ったのでメモです

途中、秀吉が「瓜、瓜、味よしの瓜や、瓜を召せ」と云って瓜を売り歩くシーンがあります

美濃国(現在の岐阜県あたり)は瓜の産地として有名だったようです

2020年NHK大河ドラマ「麒麟がくる」で、織田信長の父・信秀がやたらと瓜をかじっているシーンが多いなと思っていましたが、合点がいきました〆

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