まずは以下の状況が、あなたにも当てはまるか確認してみてください
- プロジェクトメンバーが思い通りに動いてくれない
- 想定外の事態ばかり起きる
- プロジェクトの現場で使われる用語について共通認識がない
- こんなに苦労しているのに、プロジェクトが上手く進まない
当てはまりましたか?
当てはまったのであれば書籍「予定通り進まないプロジェクトの進め方」はあなたにとって一読の価値がある本かもしれません
本書の感想
本書は以下の2点について主に説明されています
- プロジェクトとは何か?
- プロジェクト譜とは何か?
特に「プロジェクトは何か?」についての説明がとても丁寧に言語化されています
普段の現場で使われているプロジェクト用語は、誰かに教わったこともなく、OJTを通してなんとなく使うようになった方も多いのではないでしょうか
案外、用語の定義について聞かれると自信を持った回答ができないかもしれません
本書は、そんな不安を解消してくれます
プロジェクト譜は、本書の著者である前田考歩氏、後藤洋平氏が提案するプロジェクトの可視化手法になります
状況のリアルタイム共有の難しさはプロジェクトを経験した方なら、誰しも知っていることだと思いますが、その課題に対する解決策としてプロジェクト譜が提案されています
プロジェクトとは何か?
「プロジェクトとは何か?」と聞かれたら、人それぞれ多様な答えが返ってきそうです
- 未知を既知に変換していく作業
- 計画と現実とのギャップの連続
- 独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する有期性のある業務(PMBOKの定義)
- 計画通り進まないもの
本書を読んでいて、プロジェクトの定義は「計画通りに進まない物事」で良いんじゃないかと思えてきました
計画通りに進まなければ、プラント建設だろうが、システムリプレイスだろうが、買い物であろうが、恋愛であろうが、即ちそれはプロジェクトなのだと思うのです
「いや、俺のプロジェクトは計画通り進んだよ」
と云われた場合は、それはプロジェクトではなくもはやただの作業であるということで良いのではないでしょうか
計画は必要か?
あまりにプロジェクトが上手くいかないと計画を立てたり、更新したりするのが虚しくなってくることがあります
しかし以下の理由から計画は必要とのことです
- 計画は目的を達成するためのプロセスを記述したもの
- 計画は現状認識を共有するための地図
ただし、当初立てた計画に固執することはNGです
プロジェクト計画当時は情報が十分でなく未知の領域が大きいので、はじめに立てた計画通り進むものではありません
アイスクリーム味のチャーハン問題
依頼側と受諾側のコミュニケーションが取れていないと、「アイスクリーム味のチャーハン」みたいなオーダーがとんだり、提供されたりします
双方の仕事をしっかり理解してコミュニケーションを取りましょうという話です
- 依頼側の仕事:要望、要求、要件の整理
- 受諾側の仕事:仕様を決めて設計する
さらに「要望、要求、要件や仕様決め、設計の違いは何?」ということで以下のとおり整理されています
- 要望:プロジェクトを開始する根本となる動機
- 要求:要望をもとにして、依頼側と受諾側の間で明示される情報
- 要件:要求を叶えるための製造・実現内容の明確化
- 仕様:製造するものに要求する機能、性能、試験方法等の規定
- 設計:仕上がりの形や構造を図面などによって具体的に表現すること
ここでのポイントは、要件と仕様の間が依頼側と受諾側の結節点であり、「何が欲しいか」と「どう作るか」の境界線であることです
定例会議の目的
主催側には地味に負担になる定例会議
以下の目的が達成されない場合は、開催を見合わせたほうが良いかもしれません
- 計画の共有
- 現状の共有
- 課題への対処方法の共有
計画と現状と課題が整理されていないと、どうしても定例会が紛糾してしまいます
本書曰く、メンバーがプロジェクトの進め方に不安を感じる瞬間は、プロジェクトの最大の敵になり得るということです
優秀なプロマネとは
優秀なプロマネの条件は、状況の評価、次のアクションの選択、リソースの配分ができることです
- 状況の評価:状況は良いのか?悪いのか?
- 次のアクションの選択:様子を見る、対処する、回避する、ハードネゴで要求を通す等
- リソースの配分:誰の時間を使うのか?お金で解決するのか?
また、大局観も大事になってきます
大局観とは、部分から全体を類推し方針を決定することです
細部に気を取られて時間を浪費したり、クリティカルな問題をスピード重視で判断したりしないようにすることが大事です
プロジェクト工学の提唱
本書ではプロジェクト工学という技術を提唱しています
つまりはプロジェクトに対して工学的なアプローチを取るということです
工学的アプローチを取るためには、対象は以下の特性を備えている必要があります
- 観測ができること
- 記述ができること
- 制御ができること
確かにプロジェクトは上記の3条件を満たしている気がします
以下にプロジェクト工学の三大法則を引用しておきます
第一法則:やったことのない仕事の勝利条件は、事前に決められない
第二法則:プロジェクトにおいては、こうあれかしと考えて立案した施策が、想定を超えた結果をもたらす
第三法則:プロジェクトの過程における諸施策の結果もたらされる状況は、即座に次の局面における制約条件となり、ときにプロジェクトの勝利条件そのものの変更すらも要求する
詳細については本書を読んでいただきたいのですが、この三大法則から云えることは、プロジェクトとは原理的に予定通りに進まないようにできているものであり、そのため勝利条件の更新が重要であるということだと思います
プロジェクト譜とは
本書ではプロジェクト工学の記述法としてプロジェクト譜を提案しています
プロジェクト譜とは、逐次変化するプロジェクトの状況・全体像を可視化するための記述方法です
例として、「A子さんと付き合う」というプロジェクトを立ち上げたとしましょう(あくまで例です)
するとプロジェクト譜は以下のように書けます
一番右に勝利条件、その下に中間目的、その下に施策を書き、吹き出しや欄外に施策の実施状況や補足説明を記述していきます
このような図をプロジェクトの各局面で記述して情報を共有することを本書ではすすめています
おわりに
本書「予定通り進まないプロジェクトの進め方」はプロジェクトの概要について上手に言語化された良い本だと思いました
どうしてもPMBOKだと表現が抽象的で実務に落とし込むのに知識や技術が必要ですが、本書は程良い具体性で書かれており非常に読みやすいです
プロジェクト運営に悩んでいる方は読んでみると気分が晴れるかもしれません〆
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