魚豊「ひゃくえむ。」を読む

あまり漫画を読まないけいやが久しぶりに読んだ漫画は魚豊(うおと)氏の「ひゃくえむ。」です

本漫画は100メートル走のお話です

陸上競技である100メートル走の技術的な視点というよりは、「なぜ100メートルを走るのか」という問いを中心に、主人公の小学校・中学校・高校・社会人の心境を描いています

誰しも人生において「自分はなぜこれをするのか?」と己に問うシーンがあるものですが、そんな問に答えが出せずに悶々とした日々を送っている人には、その不安を吹き飛ばすエネルギーをくれる爽快な漫画でした

100メートルさえ速ければオールOK

小学校の頃は足が速ければそれだけでヒーローというのは誰しも経験上納得のいくところです

では、中学校ではどうでしょうか?

中学生にもなると一部の子は「100メートルなんか速くても飯は食えない」と言い始める頃合いで、足が速いだけでヒーローという構図は少し危ういかもしれません

高校生にもなるとなおさらです

しかし、これが本当に世界で一番足が速かったとしたら?

圧倒的に速い間は「すべてうまくいく」かも、と一瞬思いましたが、怪我や故障、負ける恐怖と戦い始めたら…、やっぱりすべてうまくいくというのは言いすぎな気もしました

競技の条件

これさえできればすべてうまくいく系の競技の条件は以下でしょう

  1. 個人競技であること
  2. 勝敗が明確であること
  3. 参加人数が多いこと

この3点を満たす競技のなかで3.の条件をもっとも満たすのが100メートル走です

大抵の人は100メートルを走ったことがあるので、その速さの凄さが実感としてわかります

陸上競技の100メートルで一番速いということは、本当に人類で一番足が速いということを意味します

一方で、例えば、「俺は野球が一番うまい」と言っても、野球はチームメートに恵まれる必要があるし、そもそも一番うまいという定義が曖昧です(すべての打席でヒットを打てばよいのか?だけれどそれは現実的に不可能)

2009年の世界陸上を観てみよう

ここでウサイン・ボルトが世界新記録を叩き出した2009年世界陸上の男子100メートル決勝を観てみましょう

決勝メンバーは以下です(丸括弧内は国名、当時の自己ベスト)

  • 第1走者:ドウェイン・チェンバース(イギリス、9.97秒)
  • 第2走者:マルク・バーンズ(トリニダード・トバゴ、9.96秒)
  • 第3走者:ダニエル・ベイリー(アンティグア・バーブーダ、9.91秒)
  • 第4走者:ウサイン・ボルト(ジャマイカ、9.69秒)
  • 第5走者:タイソン・ゲイ(アメリカ、9.84秒)
  • 第6走者:アサファ・パウエル(ジャマイカ、9.72秒)
  • 第7走者:ダービス・パットン(アメリカ、9.89秒)
  • 第8走者:リチャード・トンプソン(トリニダード・トバゴ、9.93秒)

うーん、2022年の現在から観ても錚々たるすごいメンバーです

で、各選手の表情をみて察するところは、皆さんすでに朗らかに全力で走れば勝てるという状況ではなく、「ああしたらいい、こうしたらいい」と悩みながら、自分に向き合いながら走っています

とても「100メートルさえ速ければすべてがうまくいく(本漫画で言うところの、小学生時代のトガシ状態)」という状況には思えません

ということで結論です

結論:「100メートルさえ速ければすべてがうまくいく」は小学生まで

ただこの小学生の間というのはすごく重要で、この期間に大きな挫折や失望に直面することなく、明るい未来を信じて伸び伸びと成長できることは、その人の将来に良い影響を与えると思います

ただ本漫画のトガシみたいに、「足が早けりゃ、あとは何もやらなくていいや」では人生詰むので、人生の各フェースにおいて、尊敬を集める手段として何が必要なのかはよく考えておく必要があります〆

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