「プロジェクトがうまく進まない…」
そんな人類が解決できない永遠のテーマに頭を悩ませる人は多いのではないかと思います
そんな方には、前田考歩氏と後藤洋平氏の著書「見通し不安なプロジェクトの切り拓き方」は一筋の光明となりえるかもしれません
本書は、前著の「予定通り進まないプロジェクトの進め方」で提唱されたプロジェクト工学について、ワークショップ等で得られた知見をもとに、現場での適用方法について詳しく述べられています
前著では、逐次変化するプロジェクトの状況・全体像を可視化するための記述方法としてのプロジェクト譜が紹介されましたが、本書で説明されるプロジェクト譜は可視化ツール・概念整理ツールより一歩進んで、プロジェクト内のコミュニケーション・ツールにまで昇華されたプロジェクト譜の運用方法が説明されています
本書の感想
「炎上プロジェクト」から「燃焼プロジェクト」へ
「プロジェクトが炎上」とよく聞きますが、冷静に考えると「炎上」とはどういう意味なのでしょうか?
本書では炎上とは、「次の進め方について組織的合意が取れない状態のこと」と説明しています
一方、うまく進んでいるプロジェクトもあるわけで、そんなプロジェクトを私たちはなんと呼んでいるでしょうか?
考えてみると、いまいち適当な呼び名を付けていない気がしますが、本書ではうまく進んでいるプロジェクトのことを「燃焼プロジェクト」と呼んでいます
それぞれのプロジェクトの特徴をまとめると以下の通りです
- 炎上プロジェクト:ミスがミスを呼び、怒りが怒りを招く
- 燃焼プロジェクト:成果が成果を呼び、ポジティブフィードバックがチームを成長させる
プロジェクトの苦労の大部分はコミュニケーション
プロジェクトといえば、期限内に何らかの成果物を作成するものですが、設計や製造といった具体的・直接的な作業は内容が理解できてしまえば、それほど炎上するものではないのではないでしょうか
それに比べコミュニケーション(情報伝達/合意形成)というのは、炎上の種というか、それ自体に非常に労力が必要なものです
このコミュニケーション・コストをいかに抑えるかが、プロジェクトの成否を左右するといっても過言ではないでしょう
そこで本書ではプロジェクト譜というアプローチをとっています
プロジェクトがうまく進まないパターン
本書では、プロジェクトがうまく進まないパターンと、それに対処したプロジェクト譜の例が挙げられています
参考としてそのパターンをいかに挙げておきます
- 進め方の全体像が見えていない
- 未知・状況の変化への対応方針がない
- どこまでやれば次に進んでOKか?の基準が設定されていない
- ステークホルダーが非協力的
- 顧客の要望がふわっとしていてまとまらない
- 上司の思い付きを忖度してプロジェクトが一向に始まらない
- 各部門が利害を主張して合意ができない
プロジェクトは中央集権的な組織ではうまくいかない
中央集権化するとどうしても上層部と前線部隊の間に意識の乖離が生じたり、意思決定のスローダウンを招いたりしてしまいます
理想的にはプロジェクトメンバーの各々がある程度の裁量をもって自ら行動できる委任戦術をとる方がプロジェクトはうまく進みます
ただし、委任戦術をとるには、メンバーにある程度の任務に対する理解と判断能力が必要です
結局は、メンバーの実力を見て、戦術も決めなければいけないということでしょう
心に残った言葉
以下、本書を読んでいて、心に残った言葉です
こういう言葉に触れられるだけでも、励みになります
Learning By Doing
プロジェクトはまさにこれですよね
わからないことだらけだから、やりながら学ぶ
うまくいかなくて当然だから、いちいち落ち込む必要はない
雑談とは焚火のようなもの
最近は個人的にも雑談の大切さに注目しています
寒い冬空の下、焚火をたけば、自然と人が集まってきます
火を囲む輪の中で交わされる会話は、心も温まるものでしょう
雑談もそれに似ているのでは?と思うのです
解決はできなくとも、対処はできる
これもうまくいかなくても、何かしようという感じですね
手が止まったり、立ち止まったりしそうなときに思い出したい言葉です〆
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