司馬遼太郎「城塞」を読みました
徳川家と豊臣家の最終決戦・大坂の役(冬の陣・夏の陣)を描く物語で、司馬氏40代後半(1969~1971年)の作品です
本書の感想
大き過ぎる大坂城
本書のタイトル「城塞」とは大坂城のことです
「大坂城」と聞くと、現在の大阪城をイメージしてしまいますが、当時の豊臣秀吉が築いた大坂城はもっとスケールの大きなお城です
豊臣大坂城の外郭(外堀)の範囲を現代の地図で示してみると大体以下のような感じです
当時は高層ビルなんかありませんから、ただひとつ天にそびえる大阪城の天守閣はさぞかし立派に見えたことでしょう
相変わらずの徳川家康
小説「関ヶ原」に引き続き、相変わらず策謀の限りを尽くす悪だぬきの徳川家康です
翻弄される豊臣側を見ていると、あまり気持ちの良いものではありません
物語の前半こそ、徳川側のスパイとして大坂城に潜り込んだ小幡勘兵衛と淀殿の侍女・お夏局(おなつのつぼね)のロミオとジュリエット的なラブストーリーを期待させる展開が描かれるのですが、物語の中盤以降は、家康の策謀と豊臣側の悲惨さを描くのにそれどころではないという感じになってしまい、二人の描写はどんどん減ってしまいました
物語の終盤で、大坂城が落城する際に次々と豊臣側の侍が自決していくシーンなどは、読んでいて胸が苦しくなるというか、家康が憎くなるというか、そんな気分になりました
真田幸村がかっこいい
豊臣側で一人異才を放っていたのが真田幸村でした
あの有名な真田丸を築城して徹底抗戦します
絶望的な状況であっても前向きな姿勢を崩さない真田幸村
現代で云えば、無能な上司に数々のプランを提案し、その提案が採用されずに会社が窮地に立たされても、それでも最後まで諦めずに会社と心中する企業戦士でしょうか
…ちょっと例えが微妙でしたが、とにかく敗者側の有能な人材というのは悲劇的な反面、その分魅力的に映るというものです
真田幸村は完全に主人公の風格があったので、別の小説で主人公となった姿を是非見たい思いました〆
コメント