板野博行「眠れないほどおもしろい万葉集」を読む

みなさんは春が好きですか?秋が好きですか?

けいやは秋が好きです

秋さらば 見つつ偲へと 妹が植ゑし やどのなでしこ 咲きにけるかも By大伴家持(訳:秋になったら撫子の花をみて私のことを思い出してね!って言っていた撫子の花が庭に咲きました)

春or秋の春秋の争いは日本の古典美におけるテーマのひとつです

そんなわけで、板野博行氏の著書「眠れないほどおもしろい万葉集」を読みました

夏が終わり、物悲しい季節でもあるので、800年頃に成立した我が国最古の和歌集を読んで黄昏れてみるのも良いのではないでしょうか

万葉集の歌風

万葉集は我が国最古の歌集ということもあり、その歌風は技巧的なところが少なく、素朴でストレートです

万葉集のおよそ100年後にまとめられた古今和歌集と比べると以下のような歌風の特徴があります

  • ますらをぶり(男らしくおおらかな歌風)→万葉集
  • たをやめぶり(女性的で優雅な歌風)→古今和歌集

本書では万葉集と百人一首の両方に掲載されている和歌がいくつか紹介されていますが、それらを比べて読むと、確かに万葉集のほうがストレートな表現が多いように感じました(これを「ますらをぶり」と言うのか!という新感覚)

万葉集 VS 百人一首

さて、そんな万葉集にも百人一首にも両方に載っている和歌を見てみましょう

  • 田子の浦ゆ うち出でて見れば ま白にそ 富士の高嶺に 雪は降りける From万葉集
  • 田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士のたかねに 雪は降りつつ From百人一首

この和歌は特に万葉集バージョンの「ま白にそ」がどストレートな感じがします

百人一首バージョンは「白妙(しろたえ)の」で「白い布みたい〜」と比喩表現を入れて変化球を使っている点が技巧的です

  • 思へども 思ひもかねつ あしひきの 山鳥の尾の 長きこの夜を From万葉集
  • あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかもねむ From百人一首

こちらの場合は同じ和歌のような、あるいは既に違う和歌になっているような感じもしますが、百人一首のほうが上の句で「の」を3連発させてリズムをつけているところが技巧的です(あとなぜかよくわかりませんが「ひとりかもねむ」が最高ですね!)

防人の詩

防人(さきもり)とは中国や朝鮮からの攻撃に備えて、北九州の防備に当たった兵士のことです

平安時代の時代の頃の話なので、奈良のあたりから北九州まで移動するだけで危険がいっぱいです

しかも、行きは旅に慣れた案内人がつくらしいのですが、帰りは一人で帰ってねという制度らしく(帰るのがかなり難しい)、防人に選ばれた時点で、今生の別れという感覚だったようです

いさなとり 海や死にする 山や死にする 死ぬれこそ 海は潮干て 山は枯れすれ By詠み人知らず

さだまさし氏の歌に、防人の詩(うた)というのがありますが、実は上記の万葉集の和歌から取られています

「海は死にま〜すか、山は死にま〜すか」の部分ですね

映画「二百三高地」の主題歌になっています(この映画もいつか観てみたいです)〆

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