泉田良輔氏の著書「Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない」」を読みました
本書は2014年の出版なのですが、2020年現在から見て、トヨタの未来の方向性を的確に云い当てているなという印象で、今読んでみても興味深いです
本書の感想
自動運転を巡る覇権争い
自動車の製造業がメインだったトヨタは次になりをするのか?
Googleと戦うでしょ、というのが本書のお話です
なぜGoogleと戦うのかと云えば、それはGoogleもICT(Information and Communication Technology)の強みを活かして自動運転の開発に積極的だからです
- 自動車というハードウェアをネットワークにつないでユーザが様々なサービスを享受する
- ハードウェアやソフトウェアといった局所的な世界の競争ではなく、システムとして自動運転技術を確立する
このシステムは都市デザインの変更が必要なほど規模の大きな話となるので、そもそもこの覇権争いに参加できる企業は巨大な資金調達が可能なGoogleやトヨタ等の企業に限られるとのことです
実際にトヨタの取った戦略
2014年出版の本書は「とりあえず今のまま自動車を作っているだけでは生き残れないよね」と云っていますが、その後実際にトヨタはどのような戦略を取ったのでしょうか?
トヨタからは以下のような説明が行われています
- 2018年:「自動車をつくる会社」から「モビリティ・カンパニー」へのモデルチェンジを宣言
- 2020年:「コネクティッド・シティ(Woven City)」プロジェクトを発表
モビリティ・カンパニーとは、「移動に関わるあらゆるサービスを提供する会社」ということで、脱・製造業の姿勢は明らかです
また本書では、都市デザインの重要性について強調されていますが、2020年に発表した「コネクティッド・シティ」プロジェクトは正にこの都市デザインのコンセプトに合致しています
預言書とまでは云いませんが、かなりトヨタの将来像を的確に云い当てていたのではないかと思われます
Googleとトヨタの比較
本書の内容も踏まえて、ざっくりとGoogleとトヨタを比較してみたいと思います(+αでAppleとAmazonも併記しています)
トヨタ | Apple | Amazon | ||
時価総額[1]https://www.180.co.jp/world_etf_adr/adr/ranking.htmの値を使用 | 977億ドル | 176億ドル | 1,378億ドル | 1,218億ドル |
データセンター | 所有 | ― | 所有 | 所有 |
サービスプラットフォーム | Google Play | e-Palette(?) | iTunes, App Store | Amazon.com |
OS | Android | ― | iOS, OSX | ― |
CPU | ― | ― | A8 | ― |
ハードウェア | Nexus, Chrome book | 自動車 | iPhone, iPad, Mac | Kindle |
トヨタのサービスプラットフォームの欄に現在開発・構想中の「e-Palette(イーパレット)」を入れていますが、これを成功に導けるかが大きな鍵のように思えます
さすがにトヨタがデータセンターを持ったり、OSを開発したりすることはないと思いますが、「ハードウェア+サービスプラットフォーム」でどれだけの存在感を示せるかは、Google, Apple, Amazonを見ていても非常に重要だと感じます
トヨタが生き残るためには
トヨタが今後生き残るためには以下のふたつの道しかないと本書では述べられています
- システム競争の勝者となる
- システム競争の勝者にハードウェアを納め続ける
現在のトヨタは「システム競争の勝者」を目指しているのかな?と思われます
それが「e-Palette(イーパレット)」だと思っているのですが、イーパレットもさらに巨大なシステムに飲み込まれて、トヨタがイーパレットという車を納める企業に成り下がるとトヨタ(日本)は厳しいのかもしれません
とにかく今後のトヨタの動向には目が離せないです〆
References
↑1 | https://www.180.co.jp/world_etf_adr/adr/ranking.htmの値を使用 |
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