池田香代子訳「夜と霧 新版」を読む

東京五輪の開会式のショーディレクターを務めていた小林賢太郎氏が「ユダヤ人大量虐殺ごっこ」と過去に発言したことが問題となり辞任と相成りました

その際に偶然読んでいたのが本書ヴィクトール・フランクル著、池田香代子訳「夜と霧 新版」です

本書は、第二次世界大戦下にナチスの強制収容所に収容された精神科医による経験談です

本書の感想

タイトル「夜と霧」について

本書は小説ではないので「夜と霧」というタイトルは「内容が推察できず、とてもわかりにくい」という印象です

小説なら「どんな話なんだろう、わくわく」で良いんですけどね

強制収容所での経験談をまとめた本書なので、どちらかと言えばエッセイに近く、内容の推測が難しいタイトルはどうなのかな、と個人的には思ってしまいました

調べてみると、ドイツ語の原題は「それでも人生に然りと言う:ある心理学者、強制収容所を体験する」だそうです

こちらの方がわかりやすいですね

せめて「 夜と霧 : ある心理学者、強制収容所を体験する 」くらいにしたら良いのではないかと思うのですが、どうなのでしょう

なぜ「夜と霧」なのか

それではなぜ「夜と霧」というタイトルになったかというと、その起源はアドルフ・ヒトラーによって発令された「ライヒおよび占領地における軍に対する犯罪の訴追のための規則」という命令が、通称「夜と霧」と命名されていたことにあります

この命令の内容は要約すると「強制収容所に入った人の情報は一切公表しないよ」というもの

「だからなに?」と一瞬考えてしまいますが、これにより「占領地の人々を服従させる」効果があるみたいです

「連れ去られた(かもしれない)家族や友人に危害が及ぶ(かもしれない)から逆らうのはやめておこう」ということですね

この「かもしれない」というのは非常に強力なのでしょう

夜霧に紛れるようにいつの間にか消え去ってしまう、そういう状態を目指したため「夜と霧」という命令名になったわけです

ちなみに名付けたのはヒトラー自身で、ヒトラーが愛聴していたオペラの一節に「夜と霧になれ、誰の目にも映らないように!」とあったからです

なかなか教養高いお洒落なネーミングをしますが、命令の内容が胸糞悪すぎて、現代の感覚からすると頭が混乱してしまいます…

内容について

タイトルの話ばかりしてしまいましたが、肝心な内容については、…ちょっと感想をまとめるのが難しいです

一度読んでみてください、という感想が一番かもしれません

極限状態に追い込まれた人間の精神性がいかに幼稚なレベルに落ち込むのか、その一方で精神性を高く保ち続ける人々もおり、その違いは一体何なのか、等々いろいろ考えさせられることがあります

1946年に出版された本書なので、決して読みやすいわけではありませんが、一度読んでみて人間について考える機会としてみてはいかがでしょうか〆

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